スパダリ煎茶家は、かりそめ令嬢を溺愛包囲して娶りたい。
それから二言ほど話をして、向かったのは料亭の敷地内にある庭園だった。ザ・日本庭園という感じの場所で夜だからか暗いけどとても風情がある。
庭園の奥には小川があって、大きな木もあって都会とは思えないくらいの自然が溢れている。その近くを何も話すことはなく歩くだけだ。横目で大宮さんを見ると、横顔だけで顔が整っているのがわかる……
「どうかした?」
「……いえ、なんでもないですっ」
じっくり見過ぎた……失礼だったよね。
「そういえば、こうやって二人で一緒にいるのは初めてだね」
「そういえば、そうですね。大宮さんにはたくさんお店に来てくださったのに申し訳ないです。予約も、いただいていたのに」
「気にしないでいい。お父様が亡くなって、経営が難しくなったと聞いた。それに、予約分は他の和菓子屋の方に頼んでくださったじゃないか。感謝しているよ」