スパダリ煎茶家は、かりそめ令嬢を溺愛包囲して娶りたい。



 大宮さんが言っているのは店を閉めるにあたってお得意様に連絡を入れた。手紙と電話もした。そのお得意さんの中に大宮さんも入っている。予約済みだったので、他の和菓子屋に頼んで予約分だけでも受けてもらえないか連絡を取ったのだ。


「いえ、当たり前です。いきなり作れませんじゃ誠意がないですからね……なので私にできることはそれくらいしかなかったので。大宮さんには本当に申し訳なくて……もう一度、謝りたかったんです」

「本当に気にしないでいい。俺は、【お菊】の和菓子は大好きだった。それに……俺は」


 なぜか大宮さんはそこで言葉を止めた。口ごもっていて、何かを言おうとしている感じだ。


「どうかしました?」

「俺は君に会いに行っていたんだよ」

「……え? 会いに?」

「俺は、千愛さんが好きで千愛さんに会いたくて通ってた」


 好き?大宮さんが?
 私に会いたくて……?

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