スパダリ煎茶家は、かりそめ令嬢を溺愛包囲して娶りたい。



「いらっしゃい〜じゃあ、始めましょうか」


 私はいつものように畳に座り、扇子を前に置いた。そして背筋を伸ばし、肩甲骨をつける。肩を落として顎を引くと、ゆっくりと前へ手をついて一旦止めて「よろしくお願いします」と言いながら肘を床までつけて頭を下げる。


「うん、ここ肘を張りすぎないで膝を囲うようなイメージでお辞儀ね」

「……はいっ」


 そしてゆっくりと頭を上げて肘を伸ばした形で止めて息を止め、吐くとゆっくりと手を戻して最初の姿勢にと戻る。


「前よりも良くなって来たわね。すごいわ……では、次に扇子の使い方ね」


 始めに、胸の高さで持って親骨を一つ開くと、それをずっと平らに奥へ広げていく。開いたら、握り込みで持った扇子を右膝につける。左手は手前に立て手の平で前へ閉めていくと閉じることができる。

 それを二度して、次に足のすりあしだ。姿勢を正し、腰を入れる。正面に足を滑らすように出し最後に爪先を下ろして着地する。頭は揺らさず、重心がブレないようにして歩く……と。

< 66 / 97 >

この作品をシェア

pagetop