スパダリ煎茶家は、かりそめ令嬢を溺愛包囲して娶りたい。
◇父方の祖母現る
インターホンを押した本人は、綺麗なおばあさまだった。お父さんのお母様だと言っていたけど……本当かな。
「あなたは菊亭千愛さんね。昂の一人娘」
「はい、昂は私の父の名前です」
この方は、由良乃美子さんというらしい。お茶屋で有名な由良乃製茶の社長で、父はその会社の御曹司だったと説明した。
「昂は……自分の身分や立場、肩書きを捨てても愛する人と共に生きたいと言ったのです。当時、私の夫は猛反対して無理やり昴に対し縁談を用意した」
彼女は「だけど、あの子はお見合い前日に駆け落ちをしたの」と言ってふふっと笑った。