スパダリ煎茶家は、かりそめ令嬢を溺愛包囲して娶りたい。
和成さんはスーツを着ていたが、時差ぼけだと言って眠そうだった。だけど、荷物を持って来てくれたらしい。
「……ありがとう、和成さん。疲れてるのにごめんなさい」
「いいんだよ、気にしないで。それにしても災難だったね」
「そう、ですね……」
「一応報告だけど週刊誌のコメントしていたのは千愛の婚約者だった瑛一という男だ。千愛には、『好きな人ができた』という手紙がここに来る前に来たんだろ?」
「そうだよ。だから、なんであんなコメントをしたのか……私がお金に目が眩んだなんて」
「アイツ、好きな人の父が経営してた店が倒産したんだよ。それでまた借金できたらしい。それで、週刊誌の記者に金で嘘情報を言ったらしいんだ」
そうだったのか。
でも、思ったのはそれだけでずっと一緒に過ごしてきた兄にまた裏切られた気分しかない。
「俺はこのコメントに何も言わない。あーだこーだ言って、ややこしく拗れても嫌だしな……けど、千愛がコメントしたい反論したいと思ってるなら反論文を送るよ」
「私は、何も言わないです。反論もしたいけど、しません。目に見えない会ったことのある人に言っても仕方ないですし、信じてくださる方に信じてもらえたらそれだけでいいです」
「そうか、千愛がそう思うならそうしよう。コメントを出さないということは収まるまではチカと一緒にいて。ここなら安心だ」
「うん、はい。わかりました」
和成さんは私の頭をいい子いい子とするように撫でると、帰って行ってしまった。