スノードロップと紫苑の花
🍦
赫灼とした太陽が肌だけでなく気力すらも荒らしていくなか、KAWAHARAのメンバーで静岡の海に日帰りで行くことになった。
運転手は私。
免許を持っていない里帆っちとペーパードライバーの優梨は後部座席でテンション上げながら騒いでいる。
いつもクールな優梨のこんなハイテンションな一面は貴重だったので、助手席にいる恋ちゃんにお願いして動画を撮影してもらった。
里帆っちがボケて優梨がツッコむという言葉の応酬はなかなか収まらない。
恋ちゃんもスマホを持ちながらケタケタと笑っていて車内はずっと盛り上がっていた。
上京してからまともに運転していなかった私は緊張から手汗が半端じゃなく、事故を起こさないようにできるだけ左側の車線を走って煽られないよう安全運転で行った。
東京はとにかく道が狭いしみんな荒々しいから少し運転するだけでひと苦労。
白浜の海に着いた途端、安堵からかどっと疲れが溜まった。
それぞれ新調した水着を着て場所取りに向かう。
茹だるような灼熱のビーチを歩いていると、多くの人から注目を浴びているメンバーがいる。
大きなサングラスと首元にはブランドもののネックレスをしている優梨。
黒髪のロングヘアーが風に靡いて良い香りがする。
黒いビキニに細く長い脚。
どこかのセレブのようなオーラを醸し出している。
お店の人にお願いしてパラソルを差してもらい、ブルーシートを敷く。
この日は『超』がつくほどの炎天下。
太陽の日差しが身体を焼こうと光を浴びせてくるので、みんなで日焼け止めを塗りまくり、パラソルの中に押し込むように身を寄せ合った。
里帆っちの水着は露出度高めなフロントレースアップビキニ。
背中にはリボンがあり、少し動いたら見えちゃうよっていうくらい攻めた格好で、臍ピアスが日光に反射して主張している。
私は最近体型が気になっていたのでワンピースタイプの水着にした。
優梨にはもったいないって言われたけれど、里帆っちと恋ちゃんには可愛いと褒められた。
メンバーの中で一番注目を浴びたのは恋ちゃん。
パーカーを着ていてもわかる胸の膨らみに嫉妬心はなく、出てきたのは羨望心だった。
「恋ちゃん、ばりずるいっちゃけど」
「え?何が?」
「おい、れんれん」
里帆っちが何かを思いついたように含みのある言い回しで顔をニヤニヤさせながらゆっくりと恋ちゃんに歩み寄る。
このパターンは大抵仕様もないことが多く、横にいた優梨も同じことを思っていたようだ。
少し怯えながら後退りする恋ちゃんだが、里帆っちの目はハンターそのものだった。
「そのパーカーが邪魔だな」
「ちょ、ちょっと里帆ちゃん」
「この狭い世界で逃げ道などないぞ」
「いや、めちゃめちゃあるじゃん」
お誂え向きのような里帆っちのボケに、優梨がツッコミを入れる。
里帆っちが「えいっ!」と恋ちゃんに飛びかかり、そのまま馬乗りになった。
「この大きな胸め、罪深い」
「ちょ、ちょっと里帆ちゃん。やめてよ」
恋ちゃんの抵抗も虚しく、里帆っちがその大きな胸を揉みしだいている。
「まったく、せっかくこんな良いものを授かったんだから見せつけなきゃもったいないじゃない」
馬乗りのままジップを下ろし、パーカーを脱がす。
水着が露出されると、その大きな谷間を見た私たちは一斉に響めいた。
「おおぉ〜!」
なんとも見事な膨らみ。
「ううぅ……」
両手で胸を隠しながら恥ずかしがっている。
肉付きの良さと童顔が相まってちょっとだけ犯罪の匂いがしてしまうが、その姿を見ているとなんだかお腹が空いてきた。
「アイス食べたくなってきた」
「紫苑、どのタイミングで言ってんの?」
「れんれんの胸がソフトクリームに見えたんだよね?」
「いや、見えないでしょ。どんな想像したわけ?」
今日は優梨のツッコミにキレがある。
テンションが高いからかもしれない。
海の家に行って練乳のアイスを買った。
優梨も一緒に来て、イチゴ味のかき氷を買って食べていた。
里帆っちと恋ちゃんは横で売っていた映えそうなジュースを買い、海をバックやな並んで写真を撮っていたけれど、優梨の食べるかき氷があまりに美味しそうだったので、私たちもかき氷を買って食べた。
優梨には「あんたどんだけ食べんの」って言われたけれどアイスは別腹なのです。
海の家のベンチで寛いでいると、3人組の男に話しかけられた。
1人は日焼けした金髪のチャラそうな男。
もう1人は筋トレが恋人かっていうくらいムキムキな脳筋男。
その後ろにいたのが大人しそうな印象の薄い色白の細い男。
「お姉さんたちヒマしてる?これから一緒にビーチバレーしない?」
日焼けしたチャラそうな男がビーチボールを持ちながらナンパしてきたが、アイコンタクトをして無視をする。
今度はその男に加勢するように脳筋男も絡んできた。
そういえば海に行く前、優梨から言われたことがある。
ー夏の海にいる男どもはみんなケモノ。ナンパしてくるような男はロクなやついないからガン無視で。それでもしつこいやつがいたら私に任せて。
案の定ナンパしてきた男たちはしつこく言い寄ってくる。
すると、優梨がいじっていたスマホを耳に当て、
「もしもし、ダーリン?どこにいるの?もう海の家にらいるから早く来て」
耳からスマホを離し、
「まーくんたちこれから合流するって」
そう言って不敵な笑みを浮かべた。
まーくん?優梨の彼氏ってそんなあだ名だったっけ?
それに合流するってどういうこと?
今日は女子会だったはずじゃ。
「チッ、彼氏いんのかよ。行こうぜ」
彼らはそそくさと去っていった。
「優梨、さっきのって」
「ブラフよ。しつこいから電話したふりしてあしらっただけ」
「さっすがゆりりん!」
里帆っちが優梨の肩をぽんぽんと叩きながらそう言う。
打ち合わせしておいてよかった。
その後はみんなで海へ泳ぎに行き、仮眠をしてまた泳いだ。
時間はあっという間に過ぎ、気がつけば夕方になっていた。
ー帰りの運転は恋ちゃん。
優梨も里帆っちもはしゃぎすぎて後ろで爆睡している。
助手席にいた私は恋ちゃんのサポートとして寝ないように努めたけれど、瞼はすごく重かった。
「紫苑ちゃん、次のサービスエリアで休んでもいい?」
恋ちゃんの目は虚ろ気味。
あれだけ遊んだ帰りの運転だから眠くなるのも無理はない。
私はもちろんと応えてサービスエリアで休憩する。
中に入ると美味しそうな匂いが空腹を煽ってくる。
「あっ、家系ラーメンあるじゃん」
「私も食べたい」
寝起きの2人が家系ラーメンを注文しにレジまで向かう。
私と恋ちゃんも話しながら2人に続く。
「紫苑ちゃんって家系ラーメンとか食べたことあるの?」
「うん。実は福岡にもあるんよ」
「そうなんだ。やっぱ福岡のラーメンの方が美味しい?」
「味が違うけんね、比較するのはちょっと難しいな。私は豚骨ベースなら基本的に好き」
「福岡いいなぁ。美味しいものたくさんあって」
「山形にもあるやん。米沢牛とかさくらんぼとか」
「福岡ほどじゃないよ」
「恋ちゃん福岡には行ったことないと?」
「うん、一度もない」
「じゃあ今度みんなの地元巡りしよ」
「うん、約束だよ」
ただでさえ癒し系なのに、にっこり笑う恋ちゃんの笑顔はかわいすぎて疲れをあっという間に吹き飛ばしてくれる。
みんなで豚骨ラーメンを食べて車に戻ると、満腹感からかさっき以上の眠気に襲われてきた。
「紫苑、後ろで寝てていいよ」
「いいと?」
「ペーパーでもナビくらいならできるし、それにレンタカー返さないといけないでしょ?」
「それまでは運転するよ」
「2人ともありがとう」
レンタカーは私の家の近くで借りた。
だから最後に運転するのは必然的に私。
1番家の遠い里帆っち、恋ちゃん、優梨の順で降ろすため、それまでは恋ちゃんが運転してくれることになった。
誰よりもはしゃいでいた里帆っちは後部座席で真っ先に眠っていた。
口をあんぐりさせながら眠る里帆っちが可笑しくて写真を撮ろうと思ったら彼から連絡が来ていた。
デートの誘いが嬉しくてすぐに返そうと思ったが、重たい瞼には勝てなかった。
赫灼とした太陽が肌だけでなく気力すらも荒らしていくなか、KAWAHARAのメンバーで静岡の海に日帰りで行くことになった。
運転手は私。
免許を持っていない里帆っちとペーパードライバーの優梨は後部座席でテンション上げながら騒いでいる。
いつもクールな優梨のこんなハイテンションな一面は貴重だったので、助手席にいる恋ちゃんにお願いして動画を撮影してもらった。
里帆っちがボケて優梨がツッコむという言葉の応酬はなかなか収まらない。
恋ちゃんもスマホを持ちながらケタケタと笑っていて車内はずっと盛り上がっていた。
上京してからまともに運転していなかった私は緊張から手汗が半端じゃなく、事故を起こさないようにできるだけ左側の車線を走って煽られないよう安全運転で行った。
東京はとにかく道が狭いしみんな荒々しいから少し運転するだけでひと苦労。
白浜の海に着いた途端、安堵からかどっと疲れが溜まった。
それぞれ新調した水着を着て場所取りに向かう。
茹だるような灼熱のビーチを歩いていると、多くの人から注目を浴びているメンバーがいる。
大きなサングラスと首元にはブランドもののネックレスをしている優梨。
黒髪のロングヘアーが風に靡いて良い香りがする。
黒いビキニに細く長い脚。
どこかのセレブのようなオーラを醸し出している。
お店の人にお願いしてパラソルを差してもらい、ブルーシートを敷く。
この日は『超』がつくほどの炎天下。
太陽の日差しが身体を焼こうと光を浴びせてくるので、みんなで日焼け止めを塗りまくり、パラソルの中に押し込むように身を寄せ合った。
里帆っちの水着は露出度高めなフロントレースアップビキニ。
背中にはリボンがあり、少し動いたら見えちゃうよっていうくらい攻めた格好で、臍ピアスが日光に反射して主張している。
私は最近体型が気になっていたのでワンピースタイプの水着にした。
優梨にはもったいないって言われたけれど、里帆っちと恋ちゃんには可愛いと褒められた。
メンバーの中で一番注目を浴びたのは恋ちゃん。
パーカーを着ていてもわかる胸の膨らみに嫉妬心はなく、出てきたのは羨望心だった。
「恋ちゃん、ばりずるいっちゃけど」
「え?何が?」
「おい、れんれん」
里帆っちが何かを思いついたように含みのある言い回しで顔をニヤニヤさせながらゆっくりと恋ちゃんに歩み寄る。
このパターンは大抵仕様もないことが多く、横にいた優梨も同じことを思っていたようだ。
少し怯えながら後退りする恋ちゃんだが、里帆っちの目はハンターそのものだった。
「そのパーカーが邪魔だな」
「ちょ、ちょっと里帆ちゃん」
「この狭い世界で逃げ道などないぞ」
「いや、めちゃめちゃあるじゃん」
お誂え向きのような里帆っちのボケに、優梨がツッコミを入れる。
里帆っちが「えいっ!」と恋ちゃんに飛びかかり、そのまま馬乗りになった。
「この大きな胸め、罪深い」
「ちょ、ちょっと里帆ちゃん。やめてよ」
恋ちゃんの抵抗も虚しく、里帆っちがその大きな胸を揉みしだいている。
「まったく、せっかくこんな良いものを授かったんだから見せつけなきゃもったいないじゃない」
馬乗りのままジップを下ろし、パーカーを脱がす。
水着が露出されると、その大きな谷間を見た私たちは一斉に響めいた。
「おおぉ〜!」
なんとも見事な膨らみ。
「ううぅ……」
両手で胸を隠しながら恥ずかしがっている。
肉付きの良さと童顔が相まってちょっとだけ犯罪の匂いがしてしまうが、その姿を見ているとなんだかお腹が空いてきた。
「アイス食べたくなってきた」
「紫苑、どのタイミングで言ってんの?」
「れんれんの胸がソフトクリームに見えたんだよね?」
「いや、見えないでしょ。どんな想像したわけ?」
今日は優梨のツッコミにキレがある。
テンションが高いからかもしれない。
海の家に行って練乳のアイスを買った。
優梨も一緒に来て、イチゴ味のかき氷を買って食べていた。
里帆っちと恋ちゃんは横で売っていた映えそうなジュースを買い、海をバックやな並んで写真を撮っていたけれど、優梨の食べるかき氷があまりに美味しそうだったので、私たちもかき氷を買って食べた。
優梨には「あんたどんだけ食べんの」って言われたけれどアイスは別腹なのです。
海の家のベンチで寛いでいると、3人組の男に話しかけられた。
1人は日焼けした金髪のチャラそうな男。
もう1人は筋トレが恋人かっていうくらいムキムキな脳筋男。
その後ろにいたのが大人しそうな印象の薄い色白の細い男。
「お姉さんたちヒマしてる?これから一緒にビーチバレーしない?」
日焼けしたチャラそうな男がビーチボールを持ちながらナンパしてきたが、アイコンタクトをして無視をする。
今度はその男に加勢するように脳筋男も絡んできた。
そういえば海に行く前、優梨から言われたことがある。
ー夏の海にいる男どもはみんなケモノ。ナンパしてくるような男はロクなやついないからガン無視で。それでもしつこいやつがいたら私に任せて。
案の定ナンパしてきた男たちはしつこく言い寄ってくる。
すると、優梨がいじっていたスマホを耳に当て、
「もしもし、ダーリン?どこにいるの?もう海の家にらいるから早く来て」
耳からスマホを離し、
「まーくんたちこれから合流するって」
そう言って不敵な笑みを浮かべた。
まーくん?優梨の彼氏ってそんなあだ名だったっけ?
それに合流するってどういうこと?
今日は女子会だったはずじゃ。
「チッ、彼氏いんのかよ。行こうぜ」
彼らはそそくさと去っていった。
「優梨、さっきのって」
「ブラフよ。しつこいから電話したふりしてあしらっただけ」
「さっすがゆりりん!」
里帆っちが優梨の肩をぽんぽんと叩きながらそう言う。
打ち合わせしておいてよかった。
その後はみんなで海へ泳ぎに行き、仮眠をしてまた泳いだ。
時間はあっという間に過ぎ、気がつけば夕方になっていた。
ー帰りの運転は恋ちゃん。
優梨も里帆っちもはしゃぎすぎて後ろで爆睡している。
助手席にいた私は恋ちゃんのサポートとして寝ないように努めたけれど、瞼はすごく重かった。
「紫苑ちゃん、次のサービスエリアで休んでもいい?」
恋ちゃんの目は虚ろ気味。
あれだけ遊んだ帰りの運転だから眠くなるのも無理はない。
私はもちろんと応えてサービスエリアで休憩する。
中に入ると美味しそうな匂いが空腹を煽ってくる。
「あっ、家系ラーメンあるじゃん」
「私も食べたい」
寝起きの2人が家系ラーメンを注文しにレジまで向かう。
私と恋ちゃんも話しながら2人に続く。
「紫苑ちゃんって家系ラーメンとか食べたことあるの?」
「うん。実は福岡にもあるんよ」
「そうなんだ。やっぱ福岡のラーメンの方が美味しい?」
「味が違うけんね、比較するのはちょっと難しいな。私は豚骨ベースなら基本的に好き」
「福岡いいなぁ。美味しいものたくさんあって」
「山形にもあるやん。米沢牛とかさくらんぼとか」
「福岡ほどじゃないよ」
「恋ちゃん福岡には行ったことないと?」
「うん、一度もない」
「じゃあ今度みんなの地元巡りしよ」
「うん、約束だよ」
ただでさえ癒し系なのに、にっこり笑う恋ちゃんの笑顔はかわいすぎて疲れをあっという間に吹き飛ばしてくれる。
みんなで豚骨ラーメンを食べて車に戻ると、満腹感からかさっき以上の眠気に襲われてきた。
「紫苑、後ろで寝てていいよ」
「いいと?」
「ペーパーでもナビくらいならできるし、それにレンタカー返さないといけないでしょ?」
「それまでは運転するよ」
「2人ともありがとう」
レンタカーは私の家の近くで借りた。
だから最後に運転するのは必然的に私。
1番家の遠い里帆っち、恋ちゃん、優梨の順で降ろすため、それまでは恋ちゃんが運転してくれることになった。
誰よりもはしゃいでいた里帆っちは後部座席で真っ先に眠っていた。
口をあんぐりさせながら眠る里帆っちが可笑しくて写真を撮ろうと思ったら彼から連絡が来ていた。
デートの誘いが嬉しくてすぐに返そうと思ったが、重たい瞼には勝てなかった。