スノードロップと紫苑の花
☕️
冬雪、アウターを着ていても肌寒さを感じる。
今年はスケジュールの関係で初詣を一緒にすごすことができないので、年末詣(別名 師走詣、お礼参り)をすることになった。
年末詣は初詣と違い、1年の感謝を伝えるために参拝する。
この時期は人も多くないしストレスなく参拝できるので、人混みが苦手に俺にとってはありがたい。
12月22日の冬至に近い年末に参拝することでご利益が上がるらしい。
だからクリスマスに参拝デートという謎の提案した。
半分冗談混じりで言ったが、彼女は斬新で面白うとノリノリだった。
ー当日は電車で鎌倉に向かった。
寒いねと言いながら手をつないで由比ヶ浜の方にある人気のカフェでランチをし、少し歩いたところにあるアイスバーの店への向かう。
フルーツや野菜をフローズンにしたこの店はSNSで一時的に流行ったが、人員不足やオーナーの体調不良によりもうすぐ閉店してしまう。
店内には何本ものアイスバーが刺さっていて、それを見た彼女が少女のように目をキラキラさせなかまら感動している。
「全部美味しそう」
迷いに迷った挙句、彼女はフルーツミックス味を買い、俺は巨峰味を買って食べ歩く。
アイスを少し食べると、彼女がこちらをまじまじと見つめている。
「俺の顔に何かついてる?」
「それ、美味しそう」
餌を欲しがる犬のようなかわいい表情の彼女を見て急にイタズラしたくなった。
彼女の口元へアイスを差し出すと、ニコッと笑い、アイスを食べようと口を開ける。
食べる直前でアイスを引いた。
「もう!いじわる!」
ムスッとした表情に胸が高鳴った。
ごめんごめんと言いながら食べかけのアイスを再び口元に差し出した。
美味しそうにアイスを食べている彼女は本当に幸せそうだった。
「私のも食べる?」
「ちょうだい!」
「あーん」
彼女の差し出したアイスを食べた。
「どう?」
「美味しい!」
「そか、良かった!」
お互い破顔しながら神社に向かう。
話は逸れるが、『あーん』に代わる言葉はないのだろうか?
言われるのはまだしも、言うのは恥ずかしくてたまらない。
アイスを食べ終わると同時に鶴岡八幡宮に着いた。
クリスマスに参拝する酔狂なカップルはそういなかった。
神社には地元の人や外国人観光客がちらほらいる程度だ。
そのためすぐに参拝できた。
二礼二拍手一礼をして願いごとをする。
「何お願いしたと?」
「内緒」
俺の返しに少し残念そうな表情の彼女。
「紫苑は?」
「けいくんが言ってくれたら言う」
その言い方はちょっとだけ不機嫌そうにも思えた。
彼女が泊まりに来てくれたときを契機に、お互いの呼び名が変わっていた。
紫苑は俺のことを『けいくん』と呼ぶようになった。
慶永の『慶』の字をふざけて音読みしたことがきっかけ。
「来年も紫苑といられますように」
「えっ?」
「紫苑の笑顔を1番近くで見たいからそうお願いした」
「けいくんが健康でいてくれますように」
母親ですか?
「あとね、ずっと一緒にいられますようにってお願いした」
「願いごとって2つしていいの?」
「いいの」
鶴岡八幡宮を出ると同時に粉雪が降ってきた。
予約していた海の見えるガラス張りのレストランに入る。
雪の舞う海は彼女とのクリスマスデートを祝うかのように輝いていた。
コース料理わ堪能した後、用意してきたクリスマスプレゼントを交換し合い店を出た。
江ノ電に乗って終点の藤沢駅に着くと、
「けいくんお腹空かん?うどん食べようや」
と言ってきた。
さっきご飯食べたばかりでは?と思ったが、幸せそうに食べる彼女を見るとこっちも幸せな気持ちになるので付き合うことにした。
「関東のうどんも美味しいね」
「今度福岡のうどんも食べてみたいな」
あっという間に平らげ改札を通る。
暖房の効いた電車に座ると、満腹感も相まって一気に眠たくなってきた。
すると、俺の左肩に良い香りが乗っかってきた。
長く艶のある髪が洟に触れて少しこそばゆい。
鼻腔をくすぐる甘くとろけるようなフレグランス。
気持ちよさそうにすやすやと眠っている彼女を見ているうちにこっちも瞳を閉じていた。
ーここはどこだ?
薄く暗いこの空間は一体……
洞窟?それとも鍾乳洞?
足元から差し込む赤く燃える光におそるおそる近づいていくと、その正体に慄いた。
灼熱のマグマの中に何の躊躇もなく次々と飛び込む人たち。
止めようとしても聞く耳を持たない。
話しかけても抜け殻のように何の反応もない。
誰かに洗脳されているのだろうか?
もしや俺のことが見えていないのだろうか?
人であることを否定するかの如く当たり前のように飛び込んでいくその光景はあまりに奇怪で吐き気を催した。
「けいくんどうしたと?汗かいとるよ」
やけにリアルで不気味な夢に大量の汗をかいた。
あの夢は一体何だったんだろう?
冬雪、アウターを着ていても肌寒さを感じる。
今年はスケジュールの関係で初詣を一緒にすごすことができないので、年末詣(別名 師走詣、お礼参り)をすることになった。
年末詣は初詣と違い、1年の感謝を伝えるために参拝する。
この時期は人も多くないしストレスなく参拝できるので、人混みが苦手に俺にとってはありがたい。
12月22日の冬至に近い年末に参拝することでご利益が上がるらしい。
だからクリスマスに参拝デートという謎の提案した。
半分冗談混じりで言ったが、彼女は斬新で面白うとノリノリだった。
ー当日は電車で鎌倉に向かった。
寒いねと言いながら手をつないで由比ヶ浜の方にある人気のカフェでランチをし、少し歩いたところにあるアイスバーの店への向かう。
フルーツや野菜をフローズンにしたこの店はSNSで一時的に流行ったが、人員不足やオーナーの体調不良によりもうすぐ閉店してしまう。
店内には何本ものアイスバーが刺さっていて、それを見た彼女が少女のように目をキラキラさせなかまら感動している。
「全部美味しそう」
迷いに迷った挙句、彼女はフルーツミックス味を買い、俺は巨峰味を買って食べ歩く。
アイスを少し食べると、彼女がこちらをまじまじと見つめている。
「俺の顔に何かついてる?」
「それ、美味しそう」
餌を欲しがる犬のようなかわいい表情の彼女を見て急にイタズラしたくなった。
彼女の口元へアイスを差し出すと、ニコッと笑い、アイスを食べようと口を開ける。
食べる直前でアイスを引いた。
「もう!いじわる!」
ムスッとした表情に胸が高鳴った。
ごめんごめんと言いながら食べかけのアイスを再び口元に差し出した。
美味しそうにアイスを食べている彼女は本当に幸せそうだった。
「私のも食べる?」
「ちょうだい!」
「あーん」
彼女の差し出したアイスを食べた。
「どう?」
「美味しい!」
「そか、良かった!」
お互い破顔しながら神社に向かう。
話は逸れるが、『あーん』に代わる言葉はないのだろうか?
言われるのはまだしも、言うのは恥ずかしくてたまらない。
アイスを食べ終わると同時に鶴岡八幡宮に着いた。
クリスマスに参拝する酔狂なカップルはそういなかった。
神社には地元の人や外国人観光客がちらほらいる程度だ。
そのためすぐに参拝できた。
二礼二拍手一礼をして願いごとをする。
「何お願いしたと?」
「内緒」
俺の返しに少し残念そうな表情の彼女。
「紫苑は?」
「けいくんが言ってくれたら言う」
その言い方はちょっとだけ不機嫌そうにも思えた。
彼女が泊まりに来てくれたときを契機に、お互いの呼び名が変わっていた。
紫苑は俺のことを『けいくん』と呼ぶようになった。
慶永の『慶』の字をふざけて音読みしたことがきっかけ。
「来年も紫苑といられますように」
「えっ?」
「紫苑の笑顔を1番近くで見たいからそうお願いした」
「けいくんが健康でいてくれますように」
母親ですか?
「あとね、ずっと一緒にいられますようにってお願いした」
「願いごとって2つしていいの?」
「いいの」
鶴岡八幡宮を出ると同時に粉雪が降ってきた。
予約していた海の見えるガラス張りのレストランに入る。
雪の舞う海は彼女とのクリスマスデートを祝うかのように輝いていた。
コース料理わ堪能した後、用意してきたクリスマスプレゼントを交換し合い店を出た。
江ノ電に乗って終点の藤沢駅に着くと、
「けいくんお腹空かん?うどん食べようや」
と言ってきた。
さっきご飯食べたばかりでは?と思ったが、幸せそうに食べる彼女を見るとこっちも幸せな気持ちになるので付き合うことにした。
「関東のうどんも美味しいね」
「今度福岡のうどんも食べてみたいな」
あっという間に平らげ改札を通る。
暖房の効いた電車に座ると、満腹感も相まって一気に眠たくなってきた。
すると、俺の左肩に良い香りが乗っかってきた。
長く艶のある髪が洟に触れて少しこそばゆい。
鼻腔をくすぐる甘くとろけるようなフレグランス。
気持ちよさそうにすやすやと眠っている彼女を見ているうちにこっちも瞳を閉じていた。
ーここはどこだ?
薄く暗いこの空間は一体……
洞窟?それとも鍾乳洞?
足元から差し込む赤く燃える光におそるおそる近づいていくと、その正体に慄いた。
灼熱のマグマの中に何の躊躇もなく次々と飛び込む人たち。
止めようとしても聞く耳を持たない。
話しかけても抜け殻のように何の反応もない。
誰かに洗脳されているのだろうか?
もしや俺のことが見えていないのだろうか?
人であることを否定するかの如く当たり前のように飛び込んでいくその光景はあまりに奇怪で吐き気を催した。
「けいくんどうしたと?汗かいとるよ」
やけにリアルで不気味な夢に大量の汗をかいた。
あの夢は一体何だったんだろう?