スノードロップと紫苑の花
🍦
年末年始、私は地元に帰ってきていた。
お世話になっていた高校の先輩の結婚式があるからだ。
同じ糸島市内の高校に通っていた1つ上の瞳美先輩には入学当初からずっと可愛がってもらっていた。
目が大きくて宝塚にいそうな男前の先輩。
ある日テニス部に入らない?と誘われた。
小さいころにお姉ちゃんの影響ではじめた水泳をそのまま続けるつもりだったけれど、先輩の説得に負けてテニス部に入ることにした。
そのおかげかプライベートでも仲良くさせてもらっていて、一緒に天神のスイーツ屋さんや薬院のカフェを巡っていた。
大阪や神戸にも旅行に行ったっけ。
卒業試合のときには一緒にダブルスを組ませてとらったけれど、試合前から泪が止まらなくなってミスばかりしていたことをいまでもよく覚えている。
先輩はそんなに泣いてくれてありがとうって言ってくれていたけれど、最後の試合に有終の美を飾ってあげることができなくて申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
上京することを伝え忘れていたから、招待状の返信がだいぶ遅くなってしまってちょっと怒られた。
式がこの時期に行われるのには理由があり、2人の付き合った日が1月上旬だったからみたい。
玄界灘が一望できるチャペルで新郎新婦の入場を待っていると、程なくして扉が開き主役が入場してきた。
新郎は大学時代のサークルの同級生。
優しさが全身から滲み出ていて、浮気とか絶対にしなさそうな印象の人。
シニヨンヘアーにティアラをした先輩のウェディングドレス姿は本当に晴れがましくアトラクティブで思わず泣けてきちゃいそう。
指輪交換をしたとき、薬指に光るそれを見て羨望した。
誓いのキスを交わしたときにはベールを脱いだ先輩の赤らんだ顔に少しうるっときたと同時に幸せそうな笑顔に見惚れた。
式での席は高校時代のテニス部のメンバーだったので、旧友との久しぶりの再会に会話が弾んだ。
当時の恥ずかしい話や楽しかった話、元彼や先生の話など。
ファーストバイトのとき、みんなで前に行って動画を撮り、余興のときには新郎の友人たちが笑わせてくれた。
ブーケトスのときには彼氏と同棲中の友達がキャッチしたのでそのまま結婚しれたら嬉しいな。
「瞳美先輩のウェディングドレスばり綺麗やったね」
「本当、ただでさえ綺麗なのにずるすぎやない?」
「旦那さん優しそうな人やったし、幸せになってほしい」
式が終わり、私はそのまま同じ席にいた友達2人と近くの居酒屋で飲んでいた。
「ねぇ聞いた?もうお腹の中に赤ちゃんおるらしいよ」
「ホント⁉︎羨ましい!」
「瞳美先輩の子やけん、絶対可愛いよ!」
きっと先輩に似て目がくりっとしているに違いない。
当の本人より私たちの方が浮かれている気がしたけれど、お世話になった先輩だから誰よりも幸せになってほしいと心から願った。
「ってか紫苑、東京はどう?」
「うん、楽しいよ」
友達は東京に行ったことがないので色々と聞いてくるけれど、正直私もそこまで詳しくはない。
「彼氏、東京の人なんやろ?」
「私にはもったいないくらい良い人」
彼との写真を見せながらそう言った。
「大丈夫?騙されとらん?」
既視感。
KAWAHARAのみんなに見せたときも同じ反応だった。
たしかにちょっと強面だけれど、いままで出会った人の中でも類を見ないくらいに優しい。
自慢したいという気持ちではなく、彼の魅力を理解してもらいたいという思いが強かった。
「びっくりするくらい優しいっちゃん。全然怒らんし、私のこと大切にしてくれとるし」
「ギャップやね」
「そやね、だいぶギャップあるかも」
「紫苑の元彼酷かったもんね」
高校1年生のときに付き合っていた元彼は1つ上の先輩で、サッカー部のレギュラーだった。
イケメンっていうより面白い人だった。
グラウンドが一緒だったこともあって部活前に話しかけられることが多く、数ヶ月後に告白されて付き合った。
しかし、元彼はすでに隣の高校に彼女がいて、しかも熊本の高校にも彼女がいたのだ。
付き合った時点で私は3番目。
それに気づいていながらいつか1番になれると思ってしがみつくように半年間付き合い続けた。
いま思うとよくそんなクズを好きになったなって思う。
「そういえば瞳美先輩、結婚して苗字変えとったね」
「それ普通やないと?」
「結婚する前に会ったとき、本当は苗字変えたくないって言っとったよ」
「旦那さんの苗字を名乗りたくなかったってこと?」
「というより、いままでの人生が否定された感覚になるのが嫌やったみたい。それに手続きが色々と面倒なのもあるやろし」
「私は別に気にせんけどな。紫苑はどう思う?」
どう返事していいか迷った。
いまの日本の法律だと結婚後は相手の苗字を名乗ることになる。
それが当たり前だと思っていたし、同じ苗字を名乗ることで一緒になれた気がするので、そこに対する抵抗はなかった。
でも別姓が認められるようになったらいまの苗字のままでいいと言うことになる。
苗字が変わることで別人という感覚になるのか、それとも第二の人生という感覚になるのか、捉え方の問題かもしれないけれど、もしそうなったら私はどうするのだろう?
年末年始、私は地元に帰ってきていた。
お世話になっていた高校の先輩の結婚式があるからだ。
同じ糸島市内の高校に通っていた1つ上の瞳美先輩には入学当初からずっと可愛がってもらっていた。
目が大きくて宝塚にいそうな男前の先輩。
ある日テニス部に入らない?と誘われた。
小さいころにお姉ちゃんの影響ではじめた水泳をそのまま続けるつもりだったけれど、先輩の説得に負けてテニス部に入ることにした。
そのおかげかプライベートでも仲良くさせてもらっていて、一緒に天神のスイーツ屋さんや薬院のカフェを巡っていた。
大阪や神戸にも旅行に行ったっけ。
卒業試合のときには一緒にダブルスを組ませてとらったけれど、試合前から泪が止まらなくなってミスばかりしていたことをいまでもよく覚えている。
先輩はそんなに泣いてくれてありがとうって言ってくれていたけれど、最後の試合に有終の美を飾ってあげることができなくて申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
上京することを伝え忘れていたから、招待状の返信がだいぶ遅くなってしまってちょっと怒られた。
式がこの時期に行われるのには理由があり、2人の付き合った日が1月上旬だったからみたい。
玄界灘が一望できるチャペルで新郎新婦の入場を待っていると、程なくして扉が開き主役が入場してきた。
新郎は大学時代のサークルの同級生。
優しさが全身から滲み出ていて、浮気とか絶対にしなさそうな印象の人。
シニヨンヘアーにティアラをした先輩のウェディングドレス姿は本当に晴れがましくアトラクティブで思わず泣けてきちゃいそう。
指輪交換をしたとき、薬指に光るそれを見て羨望した。
誓いのキスを交わしたときにはベールを脱いだ先輩の赤らんだ顔に少しうるっときたと同時に幸せそうな笑顔に見惚れた。
式での席は高校時代のテニス部のメンバーだったので、旧友との久しぶりの再会に会話が弾んだ。
当時の恥ずかしい話や楽しかった話、元彼や先生の話など。
ファーストバイトのとき、みんなで前に行って動画を撮り、余興のときには新郎の友人たちが笑わせてくれた。
ブーケトスのときには彼氏と同棲中の友達がキャッチしたのでそのまま結婚しれたら嬉しいな。
「瞳美先輩のウェディングドレスばり綺麗やったね」
「本当、ただでさえ綺麗なのにずるすぎやない?」
「旦那さん優しそうな人やったし、幸せになってほしい」
式が終わり、私はそのまま同じ席にいた友達2人と近くの居酒屋で飲んでいた。
「ねぇ聞いた?もうお腹の中に赤ちゃんおるらしいよ」
「ホント⁉︎羨ましい!」
「瞳美先輩の子やけん、絶対可愛いよ!」
きっと先輩に似て目がくりっとしているに違いない。
当の本人より私たちの方が浮かれている気がしたけれど、お世話になった先輩だから誰よりも幸せになってほしいと心から願った。
「ってか紫苑、東京はどう?」
「うん、楽しいよ」
友達は東京に行ったことがないので色々と聞いてくるけれど、正直私もそこまで詳しくはない。
「彼氏、東京の人なんやろ?」
「私にはもったいないくらい良い人」
彼との写真を見せながらそう言った。
「大丈夫?騙されとらん?」
既視感。
KAWAHARAのみんなに見せたときも同じ反応だった。
たしかにちょっと強面だけれど、いままで出会った人の中でも類を見ないくらいに優しい。
自慢したいという気持ちではなく、彼の魅力を理解してもらいたいという思いが強かった。
「びっくりするくらい優しいっちゃん。全然怒らんし、私のこと大切にしてくれとるし」
「ギャップやね」
「そやね、だいぶギャップあるかも」
「紫苑の元彼酷かったもんね」
高校1年生のときに付き合っていた元彼は1つ上の先輩で、サッカー部のレギュラーだった。
イケメンっていうより面白い人だった。
グラウンドが一緒だったこともあって部活前に話しかけられることが多く、数ヶ月後に告白されて付き合った。
しかし、元彼はすでに隣の高校に彼女がいて、しかも熊本の高校にも彼女がいたのだ。
付き合った時点で私は3番目。
それに気づいていながらいつか1番になれると思ってしがみつくように半年間付き合い続けた。
いま思うとよくそんなクズを好きになったなって思う。
「そういえば瞳美先輩、結婚して苗字変えとったね」
「それ普通やないと?」
「結婚する前に会ったとき、本当は苗字変えたくないって言っとったよ」
「旦那さんの苗字を名乗りたくなかったってこと?」
「というより、いままでの人生が否定された感覚になるのが嫌やったみたい。それに手続きが色々と面倒なのもあるやろし」
「私は別に気にせんけどな。紫苑はどう思う?」
どう返事していいか迷った。
いまの日本の法律だと結婚後は相手の苗字を名乗ることになる。
それが当たり前だと思っていたし、同じ苗字を名乗ることで一緒になれた気がするので、そこに対する抵抗はなかった。
でも別姓が認められるようになったらいまの苗字のままでいいと言うことになる。
苗字が変わることで別人という感覚になるのか、それとも第二の人生という感覚になるのか、捉え方の問題かもしれないけれど、もしそうなったら私はどうするのだろう?