スノードロップと紫苑の花
第3章 縁国〜ニルヴァーナ・アーカーシャ〜
【リグレット】
☕️
「……慶永」
どこからか声が聞こえた気がした。
一瞬だけだがその声に聞き覚えがあった。
久しぶりに聞く少し太いその声。
幼いころに亡くなった父さんの声だ。
生前の記憶が流れてくる。
ー家族4人揃って河原近くのキャンプ場で遊んでいる。
ジーンズを膝まで捲り、水流に佇む石の上をジャンプしながら向こう側に渡る遊びをしている父さんと兄さんの姿を見て真似したくなったのか、「僕もやる!」と言って2人に続く。
横断歩道の白線だけを渡るように兄さんに続いて石の上を飛んで遊んでいると、
「慶永、あぶないわよ」
心配する母さんの言葉は俺の耳を素通りしていった。
リズミカルに飛んでいく父さんに続こうと兄さんがジャンプすると着地に失敗して川に落ちた。
子供でも足が着くほどの深さだったのに水の勢いは思っていたよりも急で、人の身体が紙切れのように簡単に流されていった。
急流に流されていく兄さんを父さんが急いで助けに行くが、自然の猛威は恐ろしく2人はあっという間に流されていった。
母さんは動揺を隠しきれずひどく狼狽している。
数十分後、兄さんは下流の近くの砂利で見つかった。
意識はなかったが息はしていた。
しかし、助けに行ったはずの父さんが見つかることはなかった。
遺体が見つかったのは数週間後の川のほとりだった。
☕️
「……慶永」
どこからか声が聞こえた気がした。
一瞬だけだがその声に聞き覚えがあった。
久しぶりに聞く少し太いその声。
幼いころに亡くなった父さんの声だ。
生前の記憶が流れてくる。
ー家族4人揃って河原近くのキャンプ場で遊んでいる。
ジーンズを膝まで捲り、水流に佇む石の上をジャンプしながら向こう側に渡る遊びをしている父さんと兄さんの姿を見て真似したくなったのか、「僕もやる!」と言って2人に続く。
横断歩道の白線だけを渡るように兄さんに続いて石の上を飛んで遊んでいると、
「慶永、あぶないわよ」
心配する母さんの言葉は俺の耳を素通りしていった。
リズミカルに飛んでいく父さんに続こうと兄さんがジャンプすると着地に失敗して川に落ちた。
子供でも足が着くほどの深さだったのに水の勢いは思っていたよりも急で、人の身体が紙切れのように簡単に流されていった。
急流に流されていく兄さんを父さんが急いで助けに行くが、自然の猛威は恐ろしく2人はあっという間に流されていった。
母さんは動揺を隠しきれずひどく狼狽している。
数十分後、兄さんは下流の近くの砂利で見つかった。
意識はなかったが息はしていた。
しかし、助けに行ったはずの父さんが見つかることはなかった。
遺体が見つかったのは数週間後の川のほとりだった。