スノードロップと紫苑の花
☕️
残り1日
家族との再会を果たしたのに全く浄化されていない。
振り出しに戻った俺は焦燥感に駆られていた。
このままだと浄化されずに永久にこの世界に漂い続けることになる。
こんなときにアキレアはどこに行った?
両親に再会した後、忽然と姿を消した。
もし迷子センターがあるならそこでアナウンスして捜したもらおうかとも思ったが、もちろんそんなものはないのでひたすら前に進む。
彼女を捜し歩いていると、高く聳え立つ塔を見つけた。
謎の塔に入ろうとすると無表情なオートマトンたちに止められた。
何度試みてもその塔に入ることはできなかったので諦めて先に進むと、広大な天空庭園があった。
引き寄せられるように進んでいくと、1番奥の段差を上がったところにガードマンのような2体の人型オートマトンが仁王立ちして立っている。
それに守られるように若い2人の女の子が座っていた。
何れ菖蒲か杜若。
その言葉は2人のためにつくられたのかと言わんばかりに美しい顔立ち。
アキレアや竜胆くんとは違う意匠の白い司祭服に紫のチャジブルを纏っていることからきっと偉い人たちなんだと予想した。
「アキレアを知らないか?」
俺が訊ねると、2人は目を合わせた後に返事をする。
「アキちゃん?」
「ふぅ〜ん、あなたが雪落くんか〜、困っていたより若いのね〜」
なぜ俺のことを知っている?
「あんたら誰?」
彼女たちは末那と琉那という双子で、この霊域を管理する偉い人たちだった。
予想は当たったがどう見ても子供なので少し接し方に戸惑った。
「アキちゃんがいないってどういうこと?」
姉の末那の問いに、
「急にいなくなったんだ」
「あの子、あなたの担当よね〜?どうしていないの〜?」
質問に質問で返されたことより、琉那の話し方が気になる。
「わからないから聞いているんだが」
「あの子そんな自由人がないはずなんだけどな〜」
「調べてみるからちょっと待ってて。琉那」
「は〜い」
末那の合図で琉那が自分の胸骨あたりに手を当てる。
呼応するように手首に刻まれた刻印が光を放ち、2人の背後に映像が映し出された。
しかし、こっちからだと2人の頭が邪魔でよく見えない。
覗こうと思って近づくと、
「ダメ‼︎」
気配を感じたのか、振り向くこともせずそう言い放った末那の口調は荒く一瞬萎縮した。
「どうして?」
「どうしてもよ」
説明になってない。
2人と俺の間を割って入るように2体の人形オートマトンが立ち塞がる。
ただでさえ2メートル近くある巨大な図体しているんだからもう少し離れてくれ。
「末那、どうする?」
「仕方ないわね。ルールはルールだから」
「じゃあ呼び出すしかないね〜」
ルール?
呼び出す?
その後も2人で何かの話をしているが全然ついていけない。
まるで流行りのアニメやドラマの展開を語る友達の輪に入れない人の気分だ。
すると、末那が俺の方を向き、
「ユッキー、ちょっといい?」
ユッキーって俺のことか?
「お花を摘んできてくれる?」
花?
「ここから真っ直ぐ行ったところに大きな樹があるんだけど、そこに行って白い花を摘んできてほしいの」
「この時期にしか咲かない珍しい花だから、いまのうちにお願いね〜」
「自分たちで行けばいいだろ?」
「私たちやることたくさんあるから無理〜」
お菓子を食べながらそう言う琉那の言葉に重みはまったくなかった。
「ユッキーちゃんここに普通に入ってきたけど、私たちの許可なく入ってきたからね。拒否権はないよ」
強制かよ。
ってかセキュリティ甘すぎだろ。
ドアもなければ敷居もない。
あるのは小さな段差だけって。
「さ、早く行って」
そう言われて2体のオートマトンに両腕を掴まれた。
足掻こうとするもびくともしない。
いやいや、アキレアは?
ヒントすら得られないまま庭園の入り口まで連れて行かれる。
「じゃあね〜」
「急がないと間に合わなくなっちょうよ」
いや、こんなときに寸暇を惜しんでいる暇なんてないんだが。
残り1日
家族との再会を果たしたのに全く浄化されていない。
振り出しに戻った俺は焦燥感に駆られていた。
このままだと浄化されずに永久にこの世界に漂い続けることになる。
こんなときにアキレアはどこに行った?
両親に再会した後、忽然と姿を消した。
もし迷子センターがあるならそこでアナウンスして捜したもらおうかとも思ったが、もちろんそんなものはないのでひたすら前に進む。
彼女を捜し歩いていると、高く聳え立つ塔を見つけた。
謎の塔に入ろうとすると無表情なオートマトンたちに止められた。
何度試みてもその塔に入ることはできなかったので諦めて先に進むと、広大な天空庭園があった。
引き寄せられるように進んでいくと、1番奥の段差を上がったところにガードマンのような2体の人型オートマトンが仁王立ちして立っている。
それに守られるように若い2人の女の子が座っていた。
何れ菖蒲か杜若。
その言葉は2人のためにつくられたのかと言わんばかりに美しい顔立ち。
アキレアや竜胆くんとは違う意匠の白い司祭服に紫のチャジブルを纏っていることからきっと偉い人たちなんだと予想した。
「アキレアを知らないか?」
俺が訊ねると、2人は目を合わせた後に返事をする。
「アキちゃん?」
「ふぅ〜ん、あなたが雪落くんか〜、困っていたより若いのね〜」
なぜ俺のことを知っている?
「あんたら誰?」
彼女たちは末那と琉那という双子で、この霊域を管理する偉い人たちだった。
予想は当たったがどう見ても子供なので少し接し方に戸惑った。
「アキちゃんがいないってどういうこと?」
姉の末那の問いに、
「急にいなくなったんだ」
「あの子、あなたの担当よね〜?どうしていないの〜?」
質問に質問で返されたことより、琉那の話し方が気になる。
「わからないから聞いているんだが」
「あの子そんな自由人がないはずなんだけどな〜」
「調べてみるからちょっと待ってて。琉那」
「は〜い」
末那の合図で琉那が自分の胸骨あたりに手を当てる。
呼応するように手首に刻まれた刻印が光を放ち、2人の背後に映像が映し出された。
しかし、こっちからだと2人の頭が邪魔でよく見えない。
覗こうと思って近づくと、
「ダメ‼︎」
気配を感じたのか、振り向くこともせずそう言い放った末那の口調は荒く一瞬萎縮した。
「どうして?」
「どうしてもよ」
説明になってない。
2人と俺の間を割って入るように2体の人形オートマトンが立ち塞がる。
ただでさえ2メートル近くある巨大な図体しているんだからもう少し離れてくれ。
「末那、どうする?」
「仕方ないわね。ルールはルールだから」
「じゃあ呼び出すしかないね〜」
ルール?
呼び出す?
その後も2人で何かの話をしているが全然ついていけない。
まるで流行りのアニメやドラマの展開を語る友達の輪に入れない人の気分だ。
すると、末那が俺の方を向き、
「ユッキー、ちょっといい?」
ユッキーって俺のことか?
「お花を摘んできてくれる?」
花?
「ここから真っ直ぐ行ったところに大きな樹があるんだけど、そこに行って白い花を摘んできてほしいの」
「この時期にしか咲かない珍しい花だから、いまのうちにお願いね〜」
「自分たちで行けばいいだろ?」
「私たちやることたくさんあるから無理〜」
お菓子を食べながらそう言う琉那の言葉に重みはまったくなかった。
「ユッキーちゃんここに普通に入ってきたけど、私たちの許可なく入ってきたからね。拒否権はないよ」
強制かよ。
ってかセキュリティ甘すぎだろ。
ドアもなければ敷居もない。
あるのは小さな段差だけって。
「さ、早く行って」
そう言われて2体のオートマトンに両腕を掴まれた。
足掻こうとするもびくともしない。
いやいや、アキレアは?
ヒントすら得られないまま庭園の入り口まで連れて行かれる。
「じゃあね〜」
「急がないと間に合わなくなっちょうよ」
いや、こんなときに寸暇を惜しんでいる暇なんてないんだが。