LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 集中力が落ちるからミスも増える。

 ラッピングを失敗したり、かたづけようとした商品を落としたり。

「傷がつくじゃない。気をつけてよ」

 すかさず瑠璃が注意する。こういうときだけしっかり見つかる現象はなんだろう。見逃してくれてもいいじゃないか。

「すみません」

 自分が悪いのだから謝るしかない。藍は気力がどんどん(けず)られていった。

「元気だして」

 隙を見て純麗が励ましてくれる。

「この土日はクレーマーが多かったね。普段はそんなことないんだけど。来るときは来るからねえ。入ったばっかりではきつかったでしょ」

「……はい」

 正直に答える。

「まあ、何事も経験だから」

「……私、この仕事向いてないんでしょうか」

「まだ入ったばっかりじゃない」

 と言ってから、純麗は少し考えて

「そうは言っても、私のときはこんなに厳しくなかったような気もするわね。正社員だから厳しく育ててるのかしら」

「そうなんでしょうか」

 正社員だから、というレベルではないように思える。

 接客業というと大学時代にファーストフードでバイトをした経験しかない。基本的にマニュアル対応だし、厄介なお客さんは正社員の店員が引き受けてくれた。今度は自分が正社員なのだから、しっかりしなくては。もう29歳なんだから。

 藍の暗い顔を見て、純麗は(はげ)ますように彼女の腕を叩いた。

「なんとかなるわよ」

「はい」

 藍は無理やり笑った。油断すると涙がこぼれそうで、必死にこらえた。




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