ＬＥ ＣＩＥＬ ＢＲＩＬＬＡＮＴ 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜

「お疲れさま」

　藍の向かいに座り、いつものようににこやかに瑶煌が言う。

「お疲れ様です」

「何か、困っていることはない？」

　聞かれて、藍は戸惑う。しばらく考えた後、

「自分が不甲斐ないです」

　と答えた。

「始めたばかりなんだから仕方ないよ」

　自分でもわかってはいる。入社したばかりの自分がベテランの瑠璃や直哉みたいに華麗に接客できるわけなどない、と。

　だけど比べてしまう。

　同じ歳なのに。

　かたやバリバリ仕事をしている。

　かたやろくに雑用もできない。

　それどころか、酔って失態をおかして迷惑をかけている。

　だが、どうやら問題はそれだけでもない。瑠璃のことをどう捉えたらいいのか。

　うまく答えられずにいると、

「責めたいわけじゃないんだよ。落ち込まないで？」

　瑶煌が言った。温かい声だった。

「はい」

「慣れたらなんてことないよ」

　瑶煌のまっすぐな視線に耐えられず、藍はうつむいた。

　沈黙が降りる。