LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 どうしたらいいのかわからず、藍は自分の(ひざ)の上の手を見つめる。

 店の時計の音がやけにはっきり聞こえた。

「宝石は好き?」

 瑶煌の言葉が静けさを破る。

「……はい」

「好きならきっとがんばれる。努力は自信につながる」

「……はい」

 答えると、また沈黙が降りた。

 時計のみならず、自分の呼吸の音まで気になり始める。

 やめる、と言ってしまおうか。

 そしたらきっと楽になれる。

 だけど。

 と藍は少しだけ視線を動かす。テーブルにおいた瑶煌の手が目に入った。ジュエリーを生み出す、その手が。

「どうしてここで働こうと思ったの?」

 まるで面接みたいだ、と思う。だけど面接じゃない。

「昔、アクアマリンをもらったことがあったんです」

 面接のときには言わなかったことを、藍は言い始めた。面接のときにはあたりさわりのないことを言っていた。宝石に魅力を感じてとかなんとか。

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