LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
「事務所のパソコンは店長がデザインにも使ってる。サイトの管理にも使ってるからそのうち教えるね。給湯室の冷蔵庫は自由に使っていいよ。トイレはあっち。こっちの奥は工房。たいてい瑶煌(たまき)が――店長がこもってる。デザイン描いたり、作ったり。忙しいときは店にも出てくれるけど、接客はうまくないから期待しないで」

「はい」

「あ、最後、笑うとこだったんだけどな」

 恥ずかしそうに笑う直哉。藍は緊張で顔がひきつってうまく笑いを返せない。

「事務所のここに警報ベルのボタンね。モニターに強盗が映ったりしたらすぐ通報だよ。推すと店内に警報が鳴って警備会社にも連絡がいくから、間違えて押さないでね。店のカウンターにもあるよ。あとで場所を教えるから」

「はい」

「工房に入ることはないと思うけど、工房が無人のときは基本的には鍵かけてる。宝石の裸石(ルース)がおいてあるから。裸石ってわかる?」

「いえ」

「カットされただけの、まだ指輪とかネックレスとかになる前の石だけの状態のものを言うんだよ」

「そうなんですね」

「それと、俺はバイヤー兼営業だから店にいないことが多い。卸に買い付けにいたったり、瑶煌のデザインを売りにいったり。店にも立つけどね。これでもファンは多いんだよ」

 直哉はいたずらっぽく笑った。藍はうなずく。明るく話し上手な直哉なら、さそがし女性にモテるだろう。




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