LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 あれ、私、もしかして励まされたのかな。

 その思いは帰りの電車を降りたあと、じわじわと湧いてきた。

 いったん思いつくと、今度は頭から離れない。

 中清水さんが店長に言ってくれたのかな。それで店長が。

 それなら辻褄が合う気がする。

『好きならがんばれる。努力は自信になる』

 そうかな。そう思っていいのかな。

 好きならがんばれる。

 好きなら。

 私が好きなのは……。

 でも、桜内さんが……。

 彼女の嫉妬の奥にあるのは、果たして恋のなのか、彼女の居場所を侵害していることへの敵意なのか。

 恋だとして、誰に対しての恋なのか。

 もし、店長なら……。

 そう思ったとたん、心臓をぎゅっと掴まれたように痛くなる。

 揺らぐ気持ちを抱えたまま、藍は歩く。胸が熱くて痛くて、瑶煌の顔ばかりが浮かんでくる。

 街灯のない夜道は真っ暗で、か細く柔らかい月の光だけが頼りだ。

 藍はよくわからない感情に支配されて泣きそうになりながらポケットのアクアマリンを握りしめた。



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