LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 半端に残ったビールを飲み干し、店員に追加を注文する。

 瑠璃はカットされた玉子焼きを箸で割って一口食べた。

「俺、そんなに軽そうに見える?」

「見えるわよ。底なしに明るくて、心の闇なんてないみたいに見える」

 直哉は残り半分の玉子焼きをかっさらい、口いっぱいにほおばる。

「私の玉子焼き!」

「復讐。軽いって言われて傷ついた」

 ごくん、と飲み込んでから直哉は言った。

「俺にだって闇はあるわけですよ」

「闇、ねえ。そりゃ人間だからあるんだろうけど。隠したいから隠してるんでしょ」

「まあ、そうとも言える」

 届いたビールを飲む。苦味が喉に広がった。

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