LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 彼は直哉と違って硬質な美しさがあった。黒髪がそれを強調している。直哉が太陽なら彼は月だ。夜を優しく浮かび、静謐(せいひつ)な透き通った光を降らす月。優しげなのにきりっとした目元が彼の意志の強さを感じさせた。面接のときには彼の目を見ると緊張してしまい、しどろもどろになってしまった。

「で、こっちが桜内瑠璃(さくらうちるり)。お店のことは彼女に聞いてね。俺はバイヤーだから外にいることが多いから。あ、バイヤーといっても派手に外国で買い付けたりはしないんだけどね。小さい店だから。店長はデザインと修理の仕事で工房にこもってることが多いし、お店のことは彼女が一番詳しいよ」

 まるでモデルようだ、と藍は思った。藍と同じように紺色のスーツを着て立っているのに、まるで存在感が違う。背筋をのばして立っている姿はそのまま雑誌の表紙になりそうだ。手入れが行き届いた栗色の髪。肩先を少し超える長さで、毛先がかわいくカールされて彼女の美貌を縁取る。10人いれば10人とも彼女を美人だと言うだろう。やや垂れた目が愛くるしく、厚めの唇がセクシーだ。

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