LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 いくつかを見比べるように手に取ると、そのうちの一つを藍に手渡した。

「これ、いただくわ」

「ありがとうございます!」

 藍はうれしくなった。自分が作ったものではない。が、自分が作ったものが売れたかのようにうれしかった。

「それ、この子のアイディアなんですよ」

 ふいに声がして、藍は口から心臓が飛び出るかと思った。

 いつの間にか後ろに瑶煌がいた。

「あら翡翠川さん、お久しぶり」

「いらっしゃいませ。来てたならおっしゃってくれたら」

「つい話がはずんじゃって。何でも喜んで聞いてくれるんだもの。良い子を雇ったわね」

 ぎゅん、と心臓が鳴った。気がした。

 ほめられた。ほめられた。ほめられた!

「指輪の修理終わってますから、そちらもお持ちしますね」

 と瑶煌がまた工房へ戻る。

「ありがとうございます!」

 改めて礼を言い、頭を下げる。

 婦人はまた、ふふふ、と目じりに上品な(しわ)を寄せた。



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