LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜

44 信じて

 残された瑶煌は、瑠璃に鋭い目を向ける。

「何があった?」

 彼女が聞いたことのない冷たい声だった。瑶煌と過ごした時間の中で、初めて(おび)えた。

「私は何も……」

「何もないなら、どうして揉めていた? 返して、と聞こえたが」

「ちょっと待って、俺はさらにわからないんだけど」

 直哉が口を挟む。

「工房にいたら、「返して」と聞こえたような気がした。工房から出たら、茅野さんが倒れた」

 工房の扉からかすかに聞こえた叫び。だが、遅かった。

「倒れた!?」

「バランスを崩して倒れただけのようだ」

「そう? 大丈夫なの?」

「わからん。夕方にもちょっとあって、病院に行くようには言った」

「それでケアしたつもりなの? 夕方にちょっと、って何? いろいろ情報ありすぎでわけわかんないんだけど」

「夕方のことはまたあとで話す」

 瑶煌は瑠璃に向き直る。

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