LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
「甘いね、瑶煌」

 瑠璃が店を出ると直哉は言った。

「冷静になる時間は必要だろう、お互いに」

「冷静、ねえ」

 直哉は眉間に(しわ)を寄せた。

「瑠璃はどうしちゃったんだろうな」

「どうもこうも」

 前からのことではあるが、宝石のこと以外には鈍感すぎる、と直哉は半ばあきれる。

「瑠璃を買いかぶりすぎなんだよ。あいつも人間だよ」

「そう……だが」

 だから、瑠璃のやることを尊重してきたつもりだ。

 瑠璃のことを信頼して藍を預けた。

 だが。

 それが正しかったのか。

 純麗にももっと店の様子を見てほしい、と言われたばかりだった。暗に藍と瑠璃のことを指しているのはわかった。

「人間ってことはさ、醜い心も持ってるってこと。良い面ばかり見ようとするお前にはわかりづらいかもだけど」

 瑶煌は答えられず、黙る。

「明日来るかなあ、二人とも。土曜日なんだけど」

 直哉は頭をガリガリと掻いた。シルバーのバングルがキラリと光る。

 瑶煌は何も言えず黙っていた。




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