LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
「藍ちゃん?」

 反応のない彼女に、直哉が不安そうに声をかけた。

「――はい」

 ほっとしたように、直哉は藍の肩に頭を乗せる。

「ごめん。ほんとごめん」

 そう思うなら離してくれたらいいのに。ぼんやりした頭で、そう思った。

「好きに、なったんだ、君のこと。君を支えたい」

 直哉が顔をあげる。藍の至近距離に彼の顔がある。

「好きだ」

 目を見て、はっきり言われた。

 だが、今の藍の心はまるで何も感じなかった。

 ただ、目を伏せた。

「ダメ、かな」

「……ごめんなさい」

 藍が言うと、直哉が離れた。

 そのまま、二人とも何も言えず、たちすくむ。

 無言を埋めるように電車が到着する音が響き、二人の耳をふさいだ。

 ややあって駅から人が吐き出され、人波が夜の中へ消えていく。

「瑶煌のことが好きなの?」

 意を決したように、直哉が聞く。

 藍はうつむいた。

 直哉はそれを肯定と受け取ったようだった。

()けるな」

 寂しそうに、自嘲するように呟いた。




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