LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 直してほしいと言われて、反射的に断ってしまった。なんとなく、そのままをもっていてほしかった。思い出のままに、新しくしてほしくなかった。二人の思い出が塗り替えられてしまうような錯覚に陥ったから。

 そしたら直哉の助言で藍は自分で直してしまった。こんなことなら自分がやれば良かった、と後悔した。

 マスクストラップをプレゼントしてくれたのはとてもうれしかった。みんなの分もあるのが(しゃく)だったが。

 こんなに独占欲が強いとは、自分でも思わなかった。

 自分だけのものにしてしまいたい。

 だが、そうすることで彼女の美しい思い出まで壊してしまったら。

 いや、そう言って逃げているだけだ。

 彼女が見知らぬ女に暴力をふるわれているのを見たときは心臓が止まるかと思った。

 どうして助けられなかったんだ。近くにいたのに。近くにいるのに。

 せっかく再会できたのに。

 不甲斐ない。

 大きなケガはないようだったが、赤く()れた頬が痛々しかった。

 ただでさえそんなことがあった夜に、またトラブル。

 いったいなんでこんなことになってしまったんだ。

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