LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
「あ――、えっと、茅野さん」

「はい」

「真珠は乾燥に弱いんだ。だから水を置く。バラを一緒に入れているのはこの店の――というより俺のこだわり。ただコップがおいてあるより自然に見えるだろ? 真珠の美しさはバラに負けるものではないから、商品を見るときの妨げにはならないだろうと判断した。ただ、色があると邪魔だろうから白い花にしている」

 優しい低い声だが、いっきに話をされ、藍は少し戸惑う。

「そうなんですね」

 かろうじて、そう答えた。

「乾燥に弱い宝石はほかにもあって、オパールとかエメラルドなんかもダメだ。オパールは乾燥で割れることもある。逆に水に弱いものもあって――」

「はいはい、わかったわよ、瑶煌。そろそろオープンだから、そこまでにして。そもそも何しにこっちに来たのよ。予定はつまってるでしょ」

「いや、ちょっと様子を――」

 瑠璃に追いやられるようにして瑶煌は奥へ引っ込む。工房に向かったのだろう。

「じゃ、お店あけるから」

 ぶっきらぼうに言われて一緒にシャッターを開ける。

 態度が露骨に違うけど、この先大丈夫かな。

 藍は不安になる一方だった。



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