LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜

54 救急車

 藍が意識を取り戻したのは、救急車の中だった。

 初めて乗った、と救急車の天井を見ながら思う。救急隊員たちが意識をとりもどした藍をみて、隊員同士でなにか言っている。

「藍、良かった」

 ほっとしたように瑶煌が言った。

 藍の手を、瑶煌が握っていた。

「お店……」

「直哉たちに任せて来た。もう警察もきている」

「そうですか」

 ではあれは夢ではなく現実に起きたことなのか。

「強盗……ですよね。初めて見ました」

「俺もだよ」

 答える瑶煌は藍の手を握ったままだ。少し震えているようで、藍は驚いた。

「店長、手が……」

「ああ、すまない」

 誤解した瑶煌が藍の手を放す。藍の手に残った、彼の体温。

「大丈夫ですか?」

「俺の心配なんかいい。君が無事ならそれで」

 店長は優しいな。

 ぼんやりした頭で、藍はそう思った。



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