LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 田舎の地方都市。ほどよく便利で、不便は多少あるが不都合はない。

 帰ったらなじみの友達もいる。久しぶりに会える。

 地元を出て一人暮らしをしながら大学に通った。

 大学でできた友達は就職で散り散りになってしまい、たまに連絡をとるだけになってしまっている。派遣先では表面上の薄い付き合いばかりで、友達らしい友達はできなかった。

「それがいい」

 父親が静かに同意する。

 藍は答えられずに黙る。

 割って入ったのは瑶煌だった。

「すみません、茅野さんのご両親でいらっしゃいますか。私は店長の翡翠川瑶煌と申します。この度は誠に申し訳ありませんでした」

 瑶煌が頭を下げる。

「そんな謝ってもらうようなことでは……」

 戸惑うように母が答える。瑶煌のせいで強盗が入ったわけではない。

「とにかく、娘は帰らせます」

 父が断固とした口調で言う。

「お父さん……」

「私もそれがいいと思います。店は閉めようと思います」

「店長、何を言ってるんですか」

 先ほどは閉めろと言われて反発していたのに。

 どうしてこんなにすぐ翻意(ほんい)してしまうのか。

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