LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 行ったのは近所の大型スーパーに入っているパワーストーンショップだった。

 大人にとっては腰程度の低さの棚でも、彼にとっては高い棚に見えた。

 色とりどりの石の中から「アクアマリン」と書かれたそれを見つけ出すのは時間がかかった。

 手に取れる位置にあるものは比較的安価ではあったが、子供には安くなかった。

 100円でも大金なのに、それ以上を出すなんて。

 ショーケースにあるものはさらに高くて、とうてい手が出ない。

 店員は初め、彼が石にいたずらをするのでは、と監視するように見ていた。

 やがて彼が真剣に石を選んでいることに気づき、声をかけた。

 勇気が出るように、石をプレゼントしたいんだ。アクアマリンを。

 そう言う彼に寄り添って、一緒に選んでくれた。

 初めは比較的安価な裸石を勧められた。

 (いびつ)な形のものだった。彼が思ったよう青空のような水色ではなく、白濁していた。磨かれてつるんとしているが、原石の風味を残していてパワーストーンとしての雰囲気が強い。

 なんだかこれじゃない気がする。

 彼は一生懸命周りを見回した。

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