LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
「ダメです、そんなこと!」

「俺のせいだから。こうなったのも、藍ちゃんがケガしたのも」

 直哉の声には悲痛な響きがあった。

 藍は掴まれている手にもう片方の手を添える。

 直哉はそれだけで手を放して一歩下がった。

 包丁を右手に持ち変える。

 藍は両腕を後ろに回した、スマホを持ったまま。

「これでもう画面は見えないから電話できませんよ」

 安心させるように言う。直哉はうつろな目で藍を見る。

「どうして自分のせいだって思うんですか?」

 言いながら、スマホを長押しする。指紋認証で画面が開くように。

「店長に電話を」

 言って、言葉を切る。直哉から目を離さず、後ろ手のまま、藍はスマホの受信スピーカーを指で押さえる。これでうまく電話がかかっていた場合に、受信した店長の声が直哉に聞こえないように。

「電話をしたらどうしてダメなんですか?」

 言葉のつなげ方は不自然じゃなかったか。藍の鼓動が緊張で早くなる。

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