LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
「利用ですか?」

 新人の自分になんの利用価値があるんだろう。犯人にしようとした、ということだろうか。でもそれなら警察にそう言えばいいし、言われたなら警察はもっと自分を疑っているはずだ。

「俺はね、まあ簡単に言えば瑶煌にコンプレックスを感じていた。尊敬する親友だと思うと同時に、すごい劣等感があった。デザインの才能があって、媚を売らなくても人に好かれて」

 直哉は口元に笑みを浮かべた。皮肉で寂しい笑みだ。

「君のことを好きだと言ったのは本当だよ。でも、それだけじゃない。君を手に入れれば瑶煌に勝てる気がした」

 藍に目を向ける。悲しみが宿ったその目を。

「だけど、君はもう瑶煌のことを好きになっていた。遅かった。何もかも、俺はいつも瑶煌に負けている。それにね、俺は瑶煌を責めたけど、俺だって瑠璃の嫌がらせを止められなかった。同罪だ」

「同罪だなんて」

「いつも見ていた。やんわり瑠璃を咎めたこともあった。だが、自分は何も変えられなかった」

「日長さんは悪くないです」

「君にふられてやけになって、ネットに書き込みをした」

 藍は唇をぐっと引き結んだ。

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