LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 どうしよう。

 返し忘れた瑶煌の本。

『宝石と鉱石のいろいろ図鑑』

 手にとってみる。A4ほどの大きさで一センチほどの厚みがある。写真がいっぱい載っていて、二人で何度も夢中で眺めた。

 宅急便で送ろうにも住所もわからない。お店は閉店した。

 電話で住所を聞くこともできるけど、そこまでしてこの本は彼に必要だろうか。

 思い出として、もらってしまっても良いだろうか。

 いや、ずっと持っていたのだから、年季の入ったこの図鑑は、きっと彼にとっても大切なものだろう。

 ……閉店作業もあるし、またお店に行くんじゃないのかな。

 じゃあ、お店のポストに返しておけば大丈夫かな。

 よし、と藍は自分に気合をいれる。

 もう大丈夫。

 私には勇気がある。

 スーツケースをガラガラとひいて駅に向かった。

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