LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
「盗難のおそれがあるということですか?」

「そうよ。バーっと持ってバーっと走って行っちゃうんだって」

 そんなこと考えもしなかった。迂闊(うかつ)に出したまま離れそうだった。

「あのお客さんが、ということはないんだけどね。過去に別のお店でそういうことがあったんだって」

「ご指導ありがとうございます。防犯カメラがいっぱいあってもやる人いるんですね」

 店内のあちこちに防犯カメラが「安全カメラ」の名前で設置されている。

「そうなのよ。どうせすぐ捕まるのにねえ」

 ふときになって、純麗に聞いてみる。

「コンクパールってなんですか?」

「普通の真珠は二枚貝のアコヤ貝で作られるんだけど、コンクパールはコンク貝っていう巻き貝から作られるの」

「珍しいんですか?」

「そうなの。優しいピンク色のバロックパールで、とっても希少で高いの。こおんな小さな米粒くらいの大きさの一粒がついたペンダントが10万してるのを見たことあるわ」

 こおんな、と純麗が親指と人差し指で示した隙間は、指がくっつきそうなくらいしか空いていなかった。

 10万でペンダント買うより生活費の足しにしたい、と藍は思ってしまった。

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