LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜

13 偽装恋人


 結局、食事は直哉がおごってくれた。

「すみません、ありがとうございます」
 藍は礼を言った。

「いいの、迷惑かけたお()び」

 直哉はにこやかに言う。迷惑をかけているのは自分なのに、と藍は恐縮(きょうしゅく)してしまう。

「君が一緒に食事してくれただけで、俺には幸福な時間だったよ」

 なんでこんなことをさらっと言えてしまうのだろう。いちいち心臓が反応して鼓動(こどう)を早くする。自分もあのお客様のように勘違いしてしまいそうだ。

 店を出て、一緒に駅に向かって歩く。日曜日の夜、10時近い時間というせいもあってか人は少ない。

 時折、車がライトで二人を照らしては去っていく。

「日長さん、モテますよね」

 つい、言ってしまった。ぶしつけかもしれない、と思ったときにはもう口に出ていた。

「そんなことないよ。人なみくらい」

 とてもそうは思えない。この調子で客と話しているなら、勘違いする女性がいるのは当然だろうと思う。

「でも確かに、今日みたいなお客さんがいるのはちょっと困るよな。ほかの人にも迷惑だし。せっかく瑶煌(たまき)が作った店なのに、客足がおちるのは困る。あの店は瑶煌の夢だったんだ」

「そう……ですね」

 どう返事をしていいのかわからず、曖昧(あいまい)に返事をした。

 ふと、直哉はいたずらっぽい笑顔で藍を見た。

「いいこと思いついた。俺たち、付き合おうか。偽装恋人ってやつ!」

「は!?」

 すっとんきょうな声が出てしまって、慌てて口を抑える。

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