LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 ロータリーを通り過ぎる車が一瞬、日長のにこやかな笑顔を浮かび上がらせた。

「本当の恋人でもいいけど」

「な、何を……」

「かわいいなあ、茅野(かやの)さん。冗談だよ、冗談」

 言って良い冗談と悪い冗談がある。心臓が爆死するかと思った。

「本気にした?」

 ぶんぶんと首をふる。顔が赤いのは暗いからきっと見えない、と信じたい。

 そうは言っても駅前だからそれほど暗くはない。ならば駅前の大型ビジョンのカラフルな灯りのせいだ、とせめてもの言い訳をしたい。

「元気になったかな? 明日もよろしくね」

 直哉はそう言って先に駅に入っていった。

 からかわれた!

 そうは思うものの、心臓の動機は収まらない。

 あの店に就職してから血圧がおかしくなるようなことばかりが発生する。

 直哉の言葉が何度も頭に浮かび、藍はその晩、ろくに眠れなかった。

 うらんでやる、と藍は呪った。




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