LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
今日も無言のまま瑠璃と掃除をして、無言のまま店を開けた。
また掃除ばかりの一日かな、と思ったとき。
「あ――茅野さん」
瑶煌に呼び止められた。
この人なんで毎回、「あ」が入るんだろう。そんなに呼びにくい名前だろうか。
「これ読んで。仕事中に読んでいいからね」
瑶煌が藍に渡したのは『私のジュエリー図鑑』という一冊の本。
「ですが、仕事中は……」
参考資料が渡されたのはありがたいが、仕事中に読んでもいいと言われても読みづらい。
「勉強も仕事のうちだよ。もちろんお客様を優先でね」
「はい」
とはいえ、本当にいいのか、不安でしかない。店長である瑶煌が言っているのだから、問題ないはずなのだが。
お客さんには気をつけなくちゃ。
そう思いながら、藍は邪魔にならなさそうな、それでいて入り口はきちんと見える位置に本を持って移動した。
読み始めてすぐ、瑠璃が藍をとがめた。
「仕事中よ。本なんて読まないで」
さほど大きくない店内だ。店長と藍のやりとりは瑠璃にも聞こえていたはずなのに。
だがここで逆らうと関係が悪化してしまう。
「すみませんでした」
大人の対応、大人の対応。
自分にそう言い聞かせて謝る。
だが、いい加減に我慢の限界だ。
家に帰ったらビニール袋に「桜内瑠璃」って書いて蹴飛ばしてやる。
心に誓った。
それ以上特に指示もない。
藍はまたショーケースを磨くことにした。
土日にはショーケースの宝石の位置を覚えていなくてまごつくことがあった。
だから拭きながら宝石の名前と位置を頭の中に刻み込んでいく。
サファイア、ピンクサファイア、イエローサファイア、エメラルド、ルビー、アレキサンドライト……。
サファイアってこんなに色があるんだ、と発見した。
エメラルドは四角ばっかり。なんでだろう。
真珠に花珠とかいてあるのは何? 地名かと思ったが、そうでもないような。
また掃除ばかりの一日かな、と思ったとき。
「あ――茅野さん」
瑶煌に呼び止められた。
この人なんで毎回、「あ」が入るんだろう。そんなに呼びにくい名前だろうか。
「これ読んで。仕事中に読んでいいからね」
瑶煌が藍に渡したのは『私のジュエリー図鑑』という一冊の本。
「ですが、仕事中は……」
参考資料が渡されたのはありがたいが、仕事中に読んでもいいと言われても読みづらい。
「勉強も仕事のうちだよ。もちろんお客様を優先でね」
「はい」
とはいえ、本当にいいのか、不安でしかない。店長である瑶煌が言っているのだから、問題ないはずなのだが。
お客さんには気をつけなくちゃ。
そう思いながら、藍は邪魔にならなさそうな、それでいて入り口はきちんと見える位置に本を持って移動した。
読み始めてすぐ、瑠璃が藍をとがめた。
「仕事中よ。本なんて読まないで」
さほど大きくない店内だ。店長と藍のやりとりは瑠璃にも聞こえていたはずなのに。
だがここで逆らうと関係が悪化してしまう。
「すみませんでした」
大人の対応、大人の対応。
自分にそう言い聞かせて謝る。
だが、いい加減に我慢の限界だ。
家に帰ったらビニール袋に「桜内瑠璃」って書いて蹴飛ばしてやる。
心に誓った。
それ以上特に指示もない。
藍はまたショーケースを磨くことにした。
土日にはショーケースの宝石の位置を覚えていなくてまごつくことがあった。
だから拭きながら宝石の名前と位置を頭の中に刻み込んでいく。
サファイア、ピンクサファイア、イエローサファイア、エメラルド、ルビー、アレキサンドライト……。
サファイアってこんなに色があるんだ、と発見した。
エメラルドは四角ばっかり。なんでだろう。
真珠に花珠とかいてあるのは何? 地名かと思ったが、そうでもないような。