LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜

15 アクアマリンの思い出

 まだ小学2年生だったころ。

 藍は近くの公園に遊びに行った。

 その日はたまたま友達が習い事やらおでかけやらで誰もつかまらず、一人だった。

 公園のベンチでは男の子が座って何やら読み(ふけ)っていた。

 ちらりと見て、藍は気になった。

 宝石の大きな写真が表紙を飾っていた。

「ねえ、その本、見せてくれない?」

 子供らしい無邪気さで、藍は話し掛けた。

「いいよ」

 少年は少し驚いたようだったが、快く見せてくれた。

 それは子供向けの図鑑だった。大きさはあるが、厚みはない。

 中には色とりどりの宝石と原石である鉱石の写真が、解説つきで載っていた。難しい字にはルビがふってあった。

「きれいね」

 藍が言うと、男の子はうれしそうに笑った。

「そうだよな。なのにみんな、男のくせに宝石に興味あるなんて変っていうんだ」

「変じゃないよ。だってこんなにきれいだもん」

「だよな! 原石はかっこいいしカットするときれいだし、一石二鳥だよな!」

 難しい言葉を知っているな、と藍は感心した。藍の知らない言葉だったから、それが正しい使い方かどうかもわからない。

 ルビー、サファイア、エメラルド、真珠。メジャーなところはたいてい載っていた。

 アクアマリンのページに行ったときだった。

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