LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
「いつでも見に来て良いよ」

 瑶煌が言うと、すぐさま瑠璃が反論した。

「ダメよ、まだ販売の仕事を覚える時期よ」

 何も教えてくれないのに、と喉まで出掛かるが、耐える。自分の歓迎会で騒動を起こすわけにはいかない。大人なんだから。

「あ、じゃあ帰ったらこの動画見るといいよ。瑠璃が撮って編集してくれたんだ」

 と、直哉はスマホを取り出し、自店のサイトを藍に見せる。

「ここにちょうどこのバングルを作る動画があるからさ。俺が出てないからって寂しくならないでね」

「なりません」

 即答してやった。この前の恨みだ。

「えー、寂しくなってよお」

 ふふ、と直哉は笑った。

 視線を感じて顔を向けると、瑶煌と目があった。瑶煌は目を細めて笑顔を藍に見せた。

 藍は目をそらした。なんでだか、恥ずかしい。

「メイユールにいたときは大変だったわね」

 ふいに瑠璃が言う。藍に挑戦的な視線を送るが、目をそらしている藍は気が付かない。

「そうそう、俺はとくに店にいたときが大変だった。ノルマはないって言うけどさ、月の売り上げ目標があるじゃん? 到達しないと怒られるからもう必死でさ」

 屈託(くったく)なく直哉が笑う。

「実質のノルマじゃないですか」

「でもノルマじゃないって言い張るんだよねー。ときどき店長が自腹で買ってるの見て、いつかは自分もそうしなきゃいけないのかって恐ろしくなったよ」

「そんなことがあるんですね」

「あ、この店はそんなことさせないから。ゆっくりやってくれたらいいよ。瑠璃ちゃんという優秀な店員がいるし」

「中清水さんが、瑠璃さんのことをほめてました。とてもすごい方だって」

「そう」

 短く答え、瑠璃はポテトをつまんだ。

 瑠璃のそっけなさに、藍はいたたまれなくなる。

 仕事中は考えないようにしていたが、こうまでされるいわれはないはずだ。なんで、という戸惑いが怒りに変わりそうで、藍は急いでそれを頭から追い出した。ここで怒るのは大人じゃないし、そんなのは勇気じゃない。

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