LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
「えっと、昨日は仕事して、歓迎会をしてもらって……」

 あえて声にだして呟いてみる。

「それから……」

 それから、路上で叫んだ。

 思い出して、今度は羞恥(しゅうち)で心臓がばくばくする。

 ただでさえ桜内さんに好かれてないのに、あんなことしたら……。

 嫌われていると自覚したらもっときつくなる。そう思って見ないフリしてきたことを、思い切り言ってしまった。

 次にどんな顔して会えばいいんだろう。

 いや、それより今はこの状況。

 藍はベッドを下りて服を着ると、隣室へと移動した。

 引き戸で仕切られただけの隣室はリビングのようだった。

 ソファに瑶煌(たまき)が寝ているのが見える。
 ということは。

 藍は血の気が引く思いだった。

 瑶煌の家に連れて来られていたのだ。

 どうして、と混乱する。

 送る、と言われて車に乗ったところまではかろうじて記憶があった。

 何も起きてない……よね?

 藍は確認するすべをもたない。

 とにかく、今はどうするべきなのか。ここにいるべきなのか。黙って出ていくわけにもいかない。でも寝ている人を起こすのも……。そもそも、起きたときにどう対応したらいいのか。

< 65 / 262 >

この作品をシェア

pagetop