LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 藍はまったく彼のことに気付いていないようだったが、瑶煌は履歴書の写真を見た瞬間に気付いた。彼女だ。名前も合っている。いつか彼女のくれた花柄のハンカチは、使わないのにいまだに毎日持っている。

 採用だ。

 直後に言ったため、直哉に笑われた。きちんと面接しろよ。そんなに美人か?

 写真を見た直哉は首をかしげる。

 普通じゃん。かわいいけど。

 瑶煌は直哉に理由を言えなかった。

 入社した藍を見て、相変わらずかわいいと思った。

 正直、嫉妬した。

 昔は自分だって藍を下の名前で、しかも呼び捨てで呼んでいたのに。今の距離感がもどかしい。

 彼みたいに話せれば、藍との距離も縮まるのだろうに。素直に彼が羨ましいと思う。自分はうまく人と話せなくて、なんとか笑顔を作ってごまかしているような状態なのに。

 何度も、「藍」と呼びそうになり、茅野さん、と言い直していた。

 せめて、工房に引きこもるような仕事ではなければ。

 今は依頼がたくさんあって、時間がいくらあっても足りない。歯がゆい。

 昨日は夢みたいな時間だった、と瑶煌は思い出す。

 居酒屋で、瑶煌の正面に藍がいる。せっかくの機会なのに、ただそこにいてくれるだけでうれしくて胸がいっぱいになり、ろくに話すことができなかった。

 だから藍がドリンクを間違えて注文していることも飲み過ぎていることも、まったく気が付かなかった。

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