LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜

22 優柔な不断1

 ジュエリーショップ「PIERRE BLEU CIEL(ピエールブルーシエル)」は週に二日、火曜日と水曜日が定休日となっている。絶対に週休二日にする、という店長の意向でそうなっている。

 火曜日をまるまる読書に費やした藍は、水曜日にスーツを買いに外へ出た。

 資金は乏しいが、瑠璃に「ださい」と言われたことが頭に残っている。

 お店をめぐり、なるべく安くてなるべくかわいいものを。

 そう思って探すのだが、スーツなんてどれも同じに見えてしまい、考え過ぎてくらくらしてくる。

 店員のお姉さんはみんな「お似合いですよ」しか言わない。

 華やかさを求めると色が紺でも授業参観のお母さんみたいだし、無難なスーツだとまたダサいと言われそうで、どれを選んだらいいのかわからない。

 審美眼に自信がないから結局どの店でも買えず、悄然(しょうぜん)とうつむいて街を歩く。

「あ――茅野さん?」

 低い声に不意に呼び止められ、藍は顔を上げた。この独特な呼び方は。

「やっぱり。どうしたの」

 瑶煌(たまき)だった。柔らかい笑顔が(まぶ)しいのは、逆光のせいばかりではないだろう。一瞬で顔がほてる。まさかこんなところで会うなんて。

「あああああ、あの」

 瑶煌の家で一晩を過ごしたのだ。どんな顔をしたらいいのかわからない。

「買い物?」

「そ、そうです」

 平然としている瑶煌に、藍は少し悔しくなる。自分ばっかりどきどきして、なんで瑶煌は平気なんだろう。眼中にないんだろうな、とも思うのだが。

「何を買うの?」

「仕事で使うスーツを」

 早く逃げたい、と思いながら藍は答える。

「へえ。どこで買うの?」

 なんで掘り下げて来るの!
 
 心の中で叫ぶ。

「一緒に行こうか」

 どうして!

 藍に断る勇気はなく、瑶煌と一緒にスーツを探すことになった。





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