LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 初日だ。初日にコップを間違ったところに置いたとき、瑶煌はそのあと怒涛(どとう)の勢いでしゃべり始めた。

 もしかして、教えてくれようとしてるのかな。

「――ということなんだ」

「店長はさすがに博学ですね」

 言葉が途切れた瞬間を狙ってそう言うと、驚いたあとに、瑶煌は顔を少し赤らめた。

 もしかして照れてる?

 急に親しみがわいてくる。

「もっと聞かせてください」

 藍が言うと、瑶煌は顔をあげてまじまじと見て、それから笑顔になった。

 そんなにみられるとこちらが照れる。

「俺が宝石の話をすると引かれることが多いんだけどね」

 自嘲するように瑶煌が言う。

「引いてほしかったですか?」

 いたずら心が湧いて、言ってみる。

「そういうわけじゃないよ。何ていうか……聞いてくれて嬉しいよ」

 瑶煌が微笑して藍を見つめるから、藍の動機がさらに激しくなる。

「スイートローズケーキでございます」

 店員がデザートをテーブルに置いた。クリームで包まれた小さな丸いスポンジの上に、バラをかたどったピンクのローズが飾られ、銀色のアラザンが照明を反射して輝く。バラの横には小さな赤いハートのチョコレートが添えられていた。

「私は店員として成長したいと思っています。ご指導よろしくお願いします」

「それなら」

 と瑶煌はまた宝石についてにこやかに語り出す。

 宝石がいかに魅力的か、どれだけ人を喜ばすか。

 時として争いの種にもなる宝石だが、それだけ人を魅了してやまないということで。

 自然とほころぶ瑶煌の顔に、藍もつられて頬が緩んだ。

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