LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
「似合う、と言っていただけました。……気を遣ってくださっているのだと思います」

 それでも嬉しかったのだけど。いまは単純に喜んでいられる心境ではなくなってしまった。

 そう、気を遣っただけ。だから嫉妬しないで。

 攻撃しないで!

「誉め言葉は素直に受け取っていいと思うよ」

 直哉は笑顔を藍に向けた。

「バカなこと言ってないで、早く朝礼やって。時間よ」

 瑶煌が店内に入って来るのを見て瑠璃が言った。

 瑠璃の声が、藍の心に妙に響く。

 瑶煌は相変わらずの穏やかな笑みを浮かべていて、胸がきゅうっと締め付けられる。

 ここに来てから気持ちのジェットコースターがすごい。派遣をやっていたころはこんなに心が乱れることはなかった。もちろん嫌なこともあったし大変なこともあった。だが、こんなに情緒不安定になることはなかった。

 今日という日を無事に終えられますように。

 藍はポケットの中のアクアマリンに祈った。




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