LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 瑶煌はロストワックスを手彫りすることを好んだ。

 ワックスで作ったあとは業者に発注をする。量産する場合はゴム型を作ったりするが、瑶煌の場合は個人からの依頼がほとんどなので、そのまま鋳造する。

 そうは言っても彫金をまったくやらないわけではないので、瑶煌が目指す店の在り方を考えるならば防音壁は必要だろうと思った。

 壁が四方を囲んでいて自分が作業するスペースしかないから、集中できる。ときとして集中し過ぎてしまうこともあるが。

部屋の中には壁に向かってL字型の机が一つに椅子が一つ。机の上にはたくさんの工具。壁にもたくさん工具がかかっている。

 机の上部には鑑定用のライト、作業用のライトがつけられている。

 鑑定用のライトは基本的にはダイヤに使う。ダイヤの鑑定には北半球の午前中の北側の窓から入る光が良いとされている。「標準北光線」という。このライトは同じ条件の光を出してくれるのだ。

 背後の棚には宝石の裸石(ルース)――ジュエリーに使われる予定のカットされた宝石――が入った棚が備え付けられている。

 ここでは原石を割ったり削ったりの仕事はしないから、そういう機械はない。研磨は基本的には研磨士の仕事だ。

< 97 / 262 >

この作品をシェア

pagetop