推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
 私は生まれ変わってこの世界に来ちゃうくらいに、ディミトリのことが好きだったんだ。

「ごっ……ごめんっ……ごめんなさいいぃぃ……っ」

 ディミトリは私がぽろぽろと涙を流して泣いているのを見て、驚きのせいか動きが固まっていた。

 多分、彼はこういう時の対処に慣れてない。だって、相手を思うがゆえに人を避けていたから。何も悪いことをしていないのに、女の子が目の前で泣いちゃってどうしようときっと思っている。

 ようやく我に返ったのか、彼は慌ててハンカチを差し出し頭を撫でてくれた。

「どうして、泣くことがあるんだ? 何か言うなら……ありがとうで、良い。謝ることなんて、何もない。君がこうして元気になって良かった。シンシア」

「ディミトリっ……ありがとうっ……」

 ひとしきり泣いた私を彼は屋上にあったベンチへと促して、二人で隣り合って座った。

「泣き止んでくれて良かった。どうすれば良いか、わからなくて」

 さっきの戸惑いを率直に口にしたディミトリは、良くわからないと言った風に目を瞬かせた。私も彼が何か言いたげなので、それを待つことにした。

「……シンシア」

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