推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
「はい? 何ですか?」

 黙ったまま五分ほど間を置いて、ようやくディミトリが話し始めたので、私はほっと息をついた。

「なんで、そんなに可愛いんだ?」

「可愛くないですよ!」

 なっ……何を! びびびびっくりしたー!! 私は多分顔が真っ赤だけど、ディミトリは「なんでだろう」と、真顔なのも居た堪れない。

「いや。可愛いと思っていたが、より可愛い。泣き顔のせいなのかなと思ったら、そうでもない。久しぶりだからか? いや、体が良くなって元気になったからかもしれない。可愛い」

「もー!! 勘弁してください。自分のことを好きな女の子に、可愛いと言う時には、気持ちを誤解されても仕方ないですよ!」

 私がそう言ったら、ディミトリはやっぱり不可解だと言わんばかりの顔をしていた。

「え? どういう誤解だ?」

 私は屋上から全校生徒に聞こえるように「ここに自分のことを好きな女の子に、わかりきった恥ずかしいことを言わせようとしている男がいますー!!」と叫びたかった。

 いや……待って。もしかして、本当にわからないのかもしれない。

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