推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
 ディミトリって、私の下手な嘘もそのまま信じちゃうくらいに純真でチョロい人だから……。

「……えっと、そうです。ディミトリも、私が好きなんじゃないかって!」

「そうだけど」

「……え。ええええ?」

 ディミトリは出会ったばかりのアドラシアンのことが、今は好きになってしまっているだろうと思い込んでいた私は、思考停止してしまった。

「シンシアは、なんでそれがおかしいことだと思うんだ? 俺のような人間に、顔だけだとしても。好きだ好きだと何度も言われて……それに、自分が苦しい思いをしてまで俺を助けようと頑張ってくれていた。意識してから好意を持ち、好きになるのは仕方ないと思わないか」

 たっ……確かに、完全に人が恋に落ちるというパターンを踏襲してます。けど、私なんかにこんな尊い推しが?

 ううん。待つのよ。シンシア・ラザルス。現在の私、シンシア・ラザルスは、実のところ序盤に死んでしまう運命にしては、そこそこ顔も整っていて、なんなら同級生の友達も多めで、わりかし人気者。

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