推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
 隣の席に座って、分厚い本を読んでいたヒューは不思議そうな顔をした。これから始まる授業の教科書なんて、持ってきてもいない。多分、教科書の中身を全部覚えちゃっているからだと思う。

 頭の良い子を集めたドミニオリアで、群を抜いて頭が良いってどんな気分になるんだろう。一生に一度で良いから、その気持ち味わってみたい。

「ねえ。ヒュー。人の手紙を横取りして盗み見るのって、どんな罪に値すると思う?」

「……学術都市ドミニオリアの現行法なら、複数犯罪が重なり合うから結局のところ学長判断になると思う。まあ、妥当なところで初犯なら執行猶予有りなんじゃない。罪になっても罰金程度だと思う」

 ヒューはいきなり何を言い出すのかという間を置きつつ、淡々と彼の考えを教えてくれた。

「そっかー……まあ、大した罪にはならないよね」

 それも、そうだと思う。学術都市の太守である学長の機嫌が良かったら、若さゆえの暴走だろうと、前科にもならずに済まされそうだ。

「何があったの?」

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