推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
「監督生がそのアドラシアン・ノアールに懇意なのなら、可能だと思うけど……転校して来たばかりだと言うのに、そんな個人的な頼みが聞いてもらえるとは思い難い」

「神殿で育ったアドラシアンは、物凄く美女なのよ。だから、ヒューだって一目惚れしちゃうかも」

「ありえないよ」

「あら。どうして」

 私は誰かに一目惚れする可能性について、真っ向から否定したヒューを不思議になった。

 絶対にあり得ないなんて、それは言えないと思うもの。そして、全ての可能性を考慮に入れたい頭の良いヒューなら、言わない言葉のように思えた。

「……いや、それは良いよ。けど、監督生が手紙を盗んでいたのなら、大問題だ。卒業間近のこの時期にそんな馬鹿らしいことをするなんて」

「恋は、人を狂わせるのよ。ヒュー」

「まるで、狂わされたことがあるみたいに言うんだね。シンシア」

 確かに、私は恋に狂っているのかもしれない。でないと、世界で一番推しているキャラが居るとしても、二次元の世界に転生したりなんてしないもの。

「それを言うのなら、世界中の人ほぼ全員狂ってるわ。ヒュー。今の時代、王侯貴族以外は、恋愛結婚が主流だもの」

 ヒューは何かを言おうとしたみたいだけど、教室に先生が入ってきたので私とヒューの会話は中途半端なところで終わってしまった。

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