推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
 ディミトリは自分を認めてもらえるように頑張りたいとは言っていたけど……なかなか、偏見や差別というものは根深くてなくならないもの。だから、大きな社会問題としてどの時代でも論議されるのだ。

 私の両親は貴族夫婦としてスタンダードな感性で、特に先進的な教育なども受けていない。だから、子どもの頃からの考えを全て塗り替えられるとするなら、相当な彼の努力が必要なはずだ。

 私は正直に言えば、そこまでしなくて良いと思っている。

「あ。ディミトリ! 今もう帰るところ?」

 放課後の寮への帰り道に見つけた周囲から際立って目立つ後ろ姿に、私はうきうきしながら駆け寄った。もう絶対に、この人がこの国で……っていうか、世界で一番格好良いんですけど。

「……シンシア?」

「なんだか、悩んでる? 何かあったの?」

 私は愛する推しの表情を読むことにかけては、とても得意な自信がある。なぜかというと、ディミトリの顔を見ていた時間はこの世界で一番長い自信があるので。

 自分をパッと見ただけで悩んでいることを私に言い当てられたと思ったのか、ディミトリは苦笑して頷いた。

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