推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
「いや……お金が、かかるから。今は育ててくれた人が残してくれたお金があるけど、学費は奨学金でなんとかなっても、寮のお金がね……」

「ディミトリ。私、誰だと思ってるの?」

「え? シンシア・ラザルスだけど?」

 純粋なディミトリは、普通に私の名前を返した。違う違う。私が言いたいのは、そこじゃなくて。

「私。ラザルス伯爵の娘だから、シンシア・ラザルスなのは知ってるでしょう? こう見えても、貴族のお嬢様なの。だから、嫁入りの持参金代わりになる信託財産だって、私名義のものがあるんだから。ディミトリの進学に掛かるお金に使いましょう」

 やっと私の言わんとしていることを知ったのか、ディミトリは首を横に振った。

「……駄目だ。シンシアにお金を、出してもらうなんて……」

 ディミトリはそれはいけないと顔色を変えて否定しようとしたけど、私は彼の腕を取った。

「どうして。未来に私の旦那さまになるのだから、手堅い投資だわ。二人で駆け落ちするにしても、ディミトリに良い職業に就いてもらった方が私も助かるし」

 私が真剣にそう言ったら、ディミトリは一瞬固まってみるみる内に顔を真っ赤にした。

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