推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
「旦那さま!? シンシア……何を」

「だって、私たち好き同士で両想いなのよ。だから、このまま関係を深めれば結婚するって、そんなにおかしいことでもないと思うけど……もしかして、私と結婚する気がなかったの?」

 真面目なディミトリがそんな訳ないよねと私が余裕な顔でそう言えば、彼は何度か首を横に振った。

「あ。そんなつもりでもない……けど……あまりに、急展開過ぎる。シンシアは俺の寮費を出して、将来性を買うつもりなのか?」

「そう。そうして、私と順風満帆な生活を送って欲しい! ディミトリには、幸せになって欲しい。私が居れば、きっと大丈夫だから」

 ディミトリは歩みを止めて、私と向かい合った。そして、手を握って頷いてくれた。

「シンシアが居たら、なんでも出来そうな気がする」

 きらきらと艶めく黒い目。なろうと思えば闇の組織を率いるラスボスにだってなれてしまうのに、今はスペックが高過ぎるだけの真面目な男子生徒。

 ディミトリが巻き込まれる物語の結末を知っている私なら、きっと彼を幸せに出来るはず。

「まず……ディミトリには、最初に私以外の言葉を信じないようにして貰いたい」

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