推し過ぎた悲劇のラスボスと、同化しちゃった!
「とは言え、彼に邪悪な歴史を持つダークエルフの血が入っていることは、変え難い事実だ。リズウィン個人に対しいだく恐れは、彼の先祖に対する嫌悪が多く含まれているだろう」

「……それは、そうだと思うわ。リズウィン様本人だって、理解していると思うもの」

「ラザルス伯爵家の大事な令嬢シンシアは、リズウィンを信奉していると見られることで、未来の自分に不利益が生じることを理解していると言うのなら、僕もそれについてどうこうは言わないよ。君が嫁げる家の選択肢が、狭まる可能性があるということをね」

 ヒューは、とても頭の良い人だ。

 友人の私の意見を聞いて尊重し、何の非もないのにただ不利な立場に置かれているだけのディミトリに関する考えを、間違っていたようだと切り替え改めてくれたみたい。

「うん……大丈夫だよ。私はもうすぐ、ここから居なくなるもの。リズウィン様に好意を示すことでの不利益なんて、特に気にすることもないわ」

「え。待ってくれ。親の仕事の関係の、引越しか何か……? 手紙を送るから、ちゃんと引っ越した住所を教えてよ。君は僕に出来た初めての大事な友人なんだからさ」

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